「強いドル」と言わなかったイエレン新財務長官 公聴会発言から真意と通貨政策を展望する
話はそれたが、重要なことは米財務長官は「強いドル」を口にするのが仕事だが、それが為替市場の実勢を規定するとはかぎらないということである。「強いドル」が望ましいと言いつつ、実体経済にとってドル安が必要ならば平然とそれを放置するのがアメリカだ。
公聴会でイエレン新財務長官が「強いドル」と直接的に口にしなかったことを針小棒大に捉える必要はないかもしれない。ただ、今後に控えるアメリカの国債大量増発、23年末までは継続されるゼロ金利政策、トランプ支持者も取り込まなければならないバイデン政権の胸中などを踏まえれば、政治・経済的に見てドル安を予想する向きが多いだろう。
2021年に方向感はいったんドル高に変わる
だが、忘れてはならないのは2021年とは「悲観の極み」だった2020年の翌年であるということである。2021年の見通しは「2020年からの反発」を重要な要素として踏まえないと、方向感を見誤る。現状と3カ月後ないし6カ月後を比較して実体経済が改善していないと考える向きは少数派であろう。今春以降、成長率や物価を筆頭として実体経済指標は前年比で改善してくるはずだ。ワクチン接種も広がっていることだろう。
実体経済が改善すればそれにふさわしく名目金利も上昇するであろうし、その種の金利上昇ならばFRBも容認すると考えられる。アメリカの金利がはっきりと上昇してくることを前提とした場合、昨年まとまった幅で下落したドルは買い戻されると考えたい。足元でIMM通貨先物取引に見るドルの売り持ち高は過去1年で最大にまで膨らんでいる。これが巻き戻される過程でドル安の底打ちを探るというのが2021年に最もありそうな展開だ。
ただし、それは「2020年からの反発」を基軸とする2021年の相場である。2022年以降のドル高の継続を約束するものではない。2022年以降は2013年以降がそうだったように、一進一退を余儀なくされるFRBの正常化プロセスに目配りしながら、再び経常黒字や対外債権といった「実需」の厚みに注目が集まる相場に戻るだろう。2022年以降の話はまた別の機会に譲る。
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