時短で儲かる店も出現「1日6万円」協力金の是非 足並みをそろえない飲食店経営者たちの本音

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氷屋さんも同じく苦しい状況だ。飲食店の休業もだが、昨年11月の酉の市(お祭り)で、飲食の屋台が感染拡大防止を理由に、出店中止になったことも大きかったという。出店者に氷を卸し、例年大きな売り上げになっていたが、昨年はゼロ。売り上げはコロナ前より5~6割ほど減っている。一時金には、あまり期待していないと話す。

「支援金をもらうには、売り上げが昨年の半分以下になっているとか、いろいろ規定があるんですよね。氷屋はただでさえ、冬に売り上げが減る業種だから、該当するのかどうか。支援金を期待するよりも、自分たちでどう乗り切るかを考えていきます」

ある飲食関係者は、飲食店への協力金6万円を、すべて現金で支給するのではなく、取引先でのみ使用できるクーポン券にすればいい、と話した。そうすれば飲食業界全体が生き残れるのでは、と続け、政府の支援策に疑問を呈した。

店名公表でもすべてが収まるとは思えない

飲食店への20時までの時短要請。それに伴う支援策をどうするか、政府は予算の問題、不正受給の防止、協力金の迅速な支給などさまざまなことを考慮し、今回の施策を決定したのだろう。

歌舞伎町(1月9日、筆者撮影)

だがそれを受けて、飲食店は足並みをそろえなかった。政府は、時短に応じない店名の公表をちらつかせているが、それですべてが収まるとは到底思えない。

もし筆者が、時短に応じると立ち行かなくなる規模・業態の飲食店の経営者だったら、誰に何を言われようとも、店を開け続けるかもしれないからだ。

さらに、支援が足りないと嘆く取引業者の状況や、「なぜ飲食業界ばかり支援するの?」という世論もある。

困窮しているすべての業種・人を、今すぐ手厚く支援するのが難しいことは理解しているが、それでもふたを開けてみてこの状況に、政府関係者はどう思うだろうか。さらに何より大事なのは、この時短要請によって、感染者数が本当に減るかどうか、だ。1人でも多くの国民や事業者を、政府には何としてでも救っていただきたい。

(ルポライター・肥沼和之)

【著者プロフィール】
肥沼和之(こえぬま かずゆき)/1980年東京都生まれ。ジャーナリスト、ライター。ルポルタージュを主に手がける。東京・新宿ゴールデン街のプチ文壇バー「月に吠える」のマスターという顔ももつ。

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