【産業天気図・業種別業績予想集計】「会社四季報」2010年2集春号
『会社四季報』2010年1集・新春号(10年3月発売)の最新データを基にした独自集計によれば、今2010年3月期の予想営業利益(金融除く「全産業」ベース)は、前09年3月期比1.7%減益と、前号時点の予想(9.1%減益)から大幅に改善した。さらに来11年3月期は、今期予想比34.4%の営業増益が見込まれる。
完全に払拭されたとは言い難いものの、景気の二番底懸念はかなり薄らいだ。足元の為替相場は1ドル=90円台で推移し、一時の急激な円高進行は一服した。欧米先進国でのエコカー購入奨励策のような政策需要や、中国を中心とする新興国需要といった外需に牽引される形で、企業業績は上向きつつある。
もちろん、懸念材料がないわけではない。中国、インド、ブラジルなどの新興国景気は過熱感が高まっており、今後早い段階で金融引き締めが実施される可能性があるとされる。外需主導型の復調が来期を通じて維持されると期待するのは難しい。さらに、国内製造業が設備・人員リストラを進行させる中、デフレ進行が懸念され、内需型企業の苦戦が想定される。
業種別にみると、銀行・保険を除く31業種中、四季報前号より予想営業利益の合計額が上方修正された産業は15業種。製造業全体の営業益は、前号から18%増え、7兆7800億円に達する見通しだ。前号時点からの予想引き上げが顕著なのは自動車を中心とする輸送用機器。前号比154.6%増の1兆2003億円が見込まれている。このほか、38.5%増のガラス・土石製品(セメント)、24.9%増の非鉄金属なども伸び幅が大きい。
一方、前号から今期営業益予想が後退した業種は、石油・石炭製品(同34.5%減)、証券(同22.9%減)、鉄鋼(同7.7%減)など。また、海運、空運はいずれも赤字から抜け出せない。
11年3月期には全産業が黒字化するというのが四季報記者の見立て。緩やかな景気回復が、前段指摘したような懸念材で腰折れしないかが注視される。
■次ページに業種別営業利益・純利益予想の集計表を掲載