「国内ラリー」がいまいち盛り上がらない理由 地域に密着するラリー競技の難しさと課題

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「競技に参加するには、とにかくお金がかかる。特にトップクラスで戦うには大きなお金が必要となる。これでは新しい人が、おいそれと競技に入ってこられない。シリーズを通して冠スポンサーがつくことも大事だし、レギュレーションの見直しやクラスの見直しなども必要だと思う。ヨーロッパのラリー文化のように、地域の協力をえたり冠スポンサーがついたりとは、すぐにはならないだろうが、そういう方向に持っていく必要はある」(新井敏弘選手)

ラリー車は一瞬で通りすぎてしまう

新井大輝選手はラリーをより身近に楽しむために、ヨーロッパ事情を教えてくれた。

「ヨーロッパでは、ラリー開催中にインターネットやラジオで常にタイムや順位の情報がえられる。コースサイドで観戦していても、情報がすぐに手に入る。テレビ中継は難しくても、スタートやゴールでドライバーの声を発信するだけで、ドライバーがどういう気持ちで走ってきたのかを知ることができる。そういった情報の発信も重要だと思う」(新井大輝選手)

ラリーは、サーキットを周回するレース競技とは異なり、目の前をクルマが過ぎたらもう同じクルマの姿は見られない。せっかく苦労して現場に行っても、一瞬で過ぎ去ってしまうのだ。そこで新井大輝選手はこう提案する。

新井大輝選手がドライブするスバル「WRX」ラリーマシン(Copyright © STI)

「観客をいかに飽きさせないか。コースサイドにいてずっと待っていても、一瞬で通り過ぎてしまう。それでは観戦者は楽しめない。また、セレモニアルスタートやゴールも、もっと一般の人に見てもらえる場所で行うことで、ラリーに触れられる機会を増やせる。せっかく街中で開催しているのだから、その土地のよさをアピールするような場所でセレモニーを行うことも重要だと思う」(新井大輝選手)

筆者も、ラリー取材を通じて会場にいなくても楽しめるような仕組み作りが必要だと感じている。すでにラリー車の位置情報をインターネットで確認できるシステムやYouTubeでの動画配信も始まっているが、それだけでなく、さらに充実した情報発信が重要だと思う。

そのためには、オーガナイザーやラリーを統括するJRCAが、大型スポンサーを獲得し、資金をえる必要もあるだろう。ラリーファンが増え、競技者が増え、ラリー界が盛り上がる。そんな流れが大切だ。WRC(世界ラリー選手権)の日本ラウンドも予定されている中で、全日本ラリーの発展を見守りたい。

雪岡 直樹 フォトグラファー・ライター

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ゆきおか なおき / Naoki Yukioka

1974年東京生まれ。フォトスタジオアシスタントを経てフリーランスのフォトグラファーへ。雑誌やWeb媒体の撮影を担当。自動車雑誌の撮影と並行してユーザーインタビューやイベントレポートを担当することで、ライターとしても活動。国内最高峰のレース「SUPER GT選手権」を長年取材。新車情報やレースレポート、イベントレポートなどを雑誌やWebに寄稿する。

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