「国民皆保険」が崩壊すると何が起こるのか アゼルバイジャンにみる「医療階層化」の教訓

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ひるがえって、日本の公的医療保険制度はどうでしょうか。「国民皆保険」ですべての国民が公的医療保障を受けられる。「公的サービス」でほぼすべての医療がカバーされ、最先端の医療も保険で受けられる。新薬も承認されればほぼすべて保険収載されるし新医療技術も保険点数がつく。

「フリーアクセス」が保障され、医療機関を自分で選ぶことができて費用は公定価格(診療報酬で医療の価格は統制されている)。すなわち、

・「医療の進歩に見合った高い水準の医療サービス」が
・「公的費用」で賄われて(=保険のきかない医療が〈ほとんど〉なくて)
・「所得の多寡に関係なく」「ニーズに応じた平等な医療」が
・「自分が選択した医療機関」で受けられる

日本の医療は「奇跡の制度」

しかも、世界一の高齢国なのに国民医療費の水準はアメリカの半分、西欧諸国並みかそれ以下。こんな国はありません。日本の公的医療保険制度は、まさに奇跡みたいなものです。

もちろん日本の医療制度にもいろんな問題がありますし、大きな困難に直面していることも事実です。改革すべきことはたくさんあります。

壊すのはたぶん簡単です。でも、壊したらもう二度とこんな制度はつくれません。つまり、このシステムをこれからも守っていくにはどうすればいいか。物事は、そういうふうに考えなければいけない、と私は思います。

香取 照幸 上智大学教授、未来研究所臥龍代表理事

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かとり てるゆき / Teruyuki Katori

1980年旧厚生省入省。在フランスOECD事務局、内閣参事官(総理大臣官邸)、政策統括官、年金局長、雇用均等・児童家庭局長を歴任。その間、介護保険法、子ども・子育て支援法、国民年金法、男女雇用機会均等法、GPIF改革等数々の制度創設・改革を担当。また、内閣官房内閣審議官として「社会保障・税一体改革」を取りまとめた。2016年厚生労働省を退官。2017年在アゼルバイジャン共和国日本国特命全権大使。2020年4月より現職、同年8月より一般社団法人未来研究所臥龍代表理事。主な著書に『教養としての社会保障』(東洋経済新報社)がある。

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