韓国慰安婦判決は外交成果を全面否定している

日韓関係は危機的でも文在寅大統領は沈黙

強行規範というのは、条約法に関するウィーン条約の中で「いかなる逸脱も許されない規範」と定められている。ただし、具体的に何を指すかについては定まっていない。一部の国は奴隷取引や海賊行為、ジェノサイドなどが該当すると主張している。

判決の論理は、日本の慰安婦問題は反人道的行為であり、強行規範に違反している。従って主権免除は適用されず、韓国の裁判所に裁判権があるというのである。

判決はさらに、韓国憲法を持ち出して判決の正当性を主張している。慰安婦問題が強行規範に違反しているにもかかわらず、日本に対して何もできないとなれば、韓国憲法が保障している裁判を受ける権利が奪われてしまい、韓国の法秩序の理念に合致しないというのである。

判決は「不遡及の原則」に反する

近年、国際社会ではさまざまな人権侵害問題がクローズアップされ、人権を重視する動きが活発化している。今回の判決もこうした国際的潮流に沿ったものとして評価することもできるだろう。しかし、法律の世界になるとそう簡単でもない。判決にはいくつかの問題点を指摘できる。

まず強行規範の適用についてだ。この概念が国際法の世界で確立し、ウィーン条約に規定されたのは1960年代のことである。一方、慰安婦問題が起きたのは太平洋戦争中の1940年代である。つまり、慰安婦問題が起きた時代には存在していなかった強行規範という法律概念を、過去にさかのぼって適用し、違法であるとしているのだ。これはいわゆる遡及効にほかならず、法律の世界でいう「不遡及の原則」に明らかに反している。

強行規範の解釈にも問題がある。ウィーン条約は第53条で「強行規範に抵触する条約は無効である」としている。つまり、ウィーン条約の趣旨は、強行規範に反する二国間条約を作ってはいけないことだと解釈できる。個別の国家の行為が強行規範に違反する場合の処罰などは定めておらず、強行規範はあくまでも条約締結の世界の話にとどまる。

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