「植物肉」がコロナ禍で普及モードに突入の意外 大豆タンパク素材シェア1位の不二製油が牽引
不二製油のPBFS(Plant-Based Food Solutions)事業部門の小野育子氏は、「東京での出店は思った以上に反響が良かった」と明るい声で話す。丸の内ワーカーが男女問わず来店してくれたうえに、メーカーや外食関係者など販売先となる層も多く店を訪れてくれた。現時点で新たな出店予定はないと言うが、商談の機会が増えるなど一定の手ごたえを得たようだ。
植物性素材などで肉の代替品をつくる動きは、ここ数年アメリカを中心とした欧米で活発になっている。肉を食べないベジタリアンやビーガン(完全菜食主義者)の増加が背景にあるが、家畜の生育に比べて環境負荷が少ない点もニーズ拡大を後押ししている。
東京五輪の延期は痛かった
この流れを受けて、日本でも大豆ミートなどの植物肉を扱うメーカーや外食チェーンが増えてきた。例えばモスバーガーやロッテリアなどのハンバーガーチェーンは、近年相次いで大豆肉をパティに使用した商品を発売している。
訪日外国人の集客という観点からも、ベジタリアンや宗教上の理由から肉製品を避ける人たちのニーズを取り込むことはメリットがあった。ところが、このような取り組みが進む中でコロナ禍に見舞われた。
「2020年の東京オリンピック観戦や観光を目的とした訪日外国人の消費を見据えて、国内の食品業界では植物肉を使った商品やメニューが増えてきた。ところがオリンピックが延期になり、正直みんな困ったなと思った」
不二製油執行役員でPBFS部門長も務める鈴木清仁氏はそう振り返る。不二製油でも五輪開催に合わせ、大手ラーメンチェーンと共同で植物性素材のみを用いた豚骨スープの開発を進めていたが、商品化を延期している。
一方、コロナ禍はチャンスももたらした。健康志向が強まったことで植物性タンパク質が一層注目されることになったからだ。大豆タンパク質を多く含むなど栄養価が高いうえに、動物性タンパク質に比べると脂質が少ない点が好まれている。
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