海外生まれの彼女が日本舞踊「名取」になれた訳 クラウドファンディングで名取になる資金捻出

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日本の伝統芸能というと教えられたことを正確に踏襲しなければならないイメージがあるが、必ずしもそうではないという。「もちろん決まりごとはありますが、先生からは『教科書通りに踊ったのではつまらない。ハナちゃんらしさを出しなさい』とアドバイスされます」。

元駐日ポーランド大使のヤドヴィガ・ロドヴィッチ氏演出の舞台「DZIADY 祖霊祭」にも出演した(写真: Maciej Zakrzewski)

ところで、地唄舞という言葉は知っていても、どういう特徴があるのか知らない日本人も多いのではないだろうか。ハナさんに簡潔に解説してもらうと、一般的な日本舞踊というのは男目線で創作された女性像を表現しているが、地唄舞はリアルに女性を表現している。それだけにより共感できるものがあるという。

「たとえば『閨の扇(ねやのおうぎ)』という演目があります。捨てられた女性の話なのですが、私自身もボーイフレンドにふられて傷ついた経験があります。地唄舞はそういう自分の実体験と重ね合わせることができるのです」

クラウドファンディングで名取費用を捻出

2020年、長年の修業の甲斐あってハナさんは花崎流の名取となることを許され、花崎杜季女さんが主宰する会でお披露目の舞を披露することになった。しかしここでハナさんの頭を悩ませたのが費用の問題だ。

一般的に日本の伝統芸能はお金がかかる。花崎流は比較的低めの費用で名取になることができるというが、それでもハナさんにとっては安くはない。ポーランドでパフォーマーとして舞台に立っていたハナさんだが、新型コロナウイルスの影響で劇場が閉鎖され、収入も激減していた。

お金のために夢をあきらめたくない――。費用を捻出するために考え出したのがクラウドファンディングを利用することだ。フェイスブックなどを通じて友人・知人にも呼びかけたところ、目標額以上の支援が集まり、無事、名取となり「花崎貞」としてお披露目の舞台を踏むことができた。

お披露目の舞台を踏むにあたっても新たな発見があった。

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