意外と知らない?「国対委員長」の仕事の中身 立憲民主・辻元清美氏が語る国会での舞台裏

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中山さんは一度は引退したにもかかわらず、見るに見かねて戻ってきてくれることになりました。国対というのは「経験知」が何より大切です。「16年前の通常国会で、自民党が強行採決したときに、野党が不信任案を続けて出して……」といった事例をいくつ知っているか、そこから新しい戦術をどこまでつくれるかがカギを握る、そんな世界なのです。

「生き字引」のようなベテラン職員が「軍師」としてどっしり構えていることで、私という新米委員長が仕切る立憲国対は「手ごわいかもしれない」と周囲からなめられなかったと思います。中山さんは、基本は事務所の隅に座ってカレンダーなどを眺めているのですが、何かさらさらと書いてきたメモが、局面を反転させるような奇策だったこともたびたびありました。

互いに何手も先を読み合う

与党と野党の駆け引きは、囲碁や将棋の世界と似ているのでしょう。国会法や衆議院規則や先例集などのルールに従い、互いに何手も先を読み合い、石や駒を取り合いながら、盤面をつくっていく。時に花を持たせることはあっても、最後は大局で勝つために死力を尽くす。私は彼(中山さん)から多くの「定石」を教えてもらいました。

彼らと知恵を合わせながら、議員会館や議員宿舎の部屋割り(こういうことも国対の仕事です)、公用車の手配、国会議員を「どの委員会に配属するか」という人事まで、特別国会が始まるまでの1週間のうちに整えなければなりませんでした。

一方で自民党の国対は専任の職員が10名以上、国対委員長を補佐する国会議員(国対委員長代理や副委員長など)も数十人もいるのです。マンパワーが乏しい中、衆議院から派遣される職員たちもこの状況を共有してくれて、皆フラフラになって働いてくれました。

そして何より3つ目は、「安倍政権」という異様な政権とたたかわなければならなかったことです。私に初めから要求されたのは、従来型の与野党が調整しながら進む国会運営ではなく、三権分立さえないがしろにしかねない安倍官邸との対峙だったのです。

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