「ソウルフル・ワールド」でも健在のピクサー魂 配信公開切り替えでも世界中の視聴者を魅了

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今回の「ソウルフル・ワールド」の配信リリースがきっかけで、今後のピクサーの制作体制に変化はあるのだろうか。

その疑問に「直接的にはないかと思うが、実際問題、アメリカでは今はディズニープラスでしか作品を観ることができないわけですから……」と答えたドクター監督。「ありがたいことに、ピクサーの作品をもっと作ってほしいと言われています。もちろんわれわれはこれからも映画館で上映される映画を作っていきたいし、サポートしていきたい。ただしそれはコロナが収束してからのことですけどね」と続けた。

そんな状況の中で、若い才能が着実に育ってきていることに希望を見いだしているという。

「彼らがいろいろなストーリーを練ってきてくれるので、6分から10分ぐらいの短編や中編をどんどんと作っている。その中で今は『Win or Lose』(2023年ディズニープラスで配信予定)というシリーズものを作っています。これは同じ事件を違った視点から、短いエピソードごとに見せていくもの。それが結果的に全部の尺を合わせると150分ぐらいのものになるんです。これは今までピクサーでやったことがない、新しいストーリーテリング。しかもそれを手がけているのは若くて多様性に富んだ新たな才能たちだ」(ドクター監督)

映画鑑賞の習慣は少し変わってくるのかもしれない

ディズニーだけでなく、ワーナーやパラマウントなど、ハリウッドの大手映画スタジオは今、劇場公開と配信公開との兼ね合いにどう折り合いをつけるか、模索を続けている。

ドクター監督は「でも完全に映画館がなくなるということはないと思っている。同時に、家で作品を見るということは、とても居心地がいいし、親密な体験として親しまれるようになってきている。今後のことはどうなるのかは誰にもわからない。確かに映画鑑賞の習慣は少し変わってくるのかもしれない。それに従ってストーリーの作られ方も変わってくるのかもしれない。果たしてそれが大きな変化になるのか、小さな変化になるのか。それが明らかになるのはこれから」だと感じているという。

ただ、そうした変化はコロナになったからではなく、以前からそうした潮流があったとドクター監督は指摘する。

「10年ほど前から、劇場用作品として作られる映画は大型のヒーローものや、アクション映画が多くなっていた。そんな中、ピクサーが本当に運がいいと思うのは、表面的にはそういうスペクタクルな大作感がありつつも、その心はインディーズというか、ものすごくパーソナルな作品だということだ。

僕たちの人生がそのまま反映されている作品を作っている。それが車であっても、モンスターであっても、すべて僕たちについての映画でもある。そうしたユニークな作品を作ることができているからこそ、ピクサーはこれからも、インディーズ的な小さな映画と、大作との、両方の架け橋になっていけるんじゃないかと思っている」(ドクター監督)

世界中に愛される大作を次々と作り出せるのは、スタジオ全体にこうした「ピクサー魂」が受け継がれているからだろう。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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