「ソウルフル・ワールド」でも健在のピクサー魂 配信公開切り替えでも世界中の視聴者を魅了

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では、ピクサーの発想の原点はどこにあるのか。

そもそも、これまでのピクサー作品は、クリエーターのパーソナルな出来事から発想が生まれ、万人が楽しめるエンターテインメントに昇華させてきた。本作もそのスタイルは変わらない。

ピクサー最古参で『カールじいさんの空飛ぶ家』や『インサイド・ヘッド』の監督も務めたピート・ドクター監督 © 2020 Disney/Pixar.

ドクター監督はその源を次のように語る。

「個性というのは、その人の生きてきた人生の経験から作られるという言われ方もある。でも23年前に長男が生まれて。その後に生まれた娘もそうだったが、赤ちゃんなのにすでに個性がある。生まれたときから個性があるということは、生まれる前にどこかで作られていたんじゃないかと考えた。そこでソウル<魂>の世界というものを想起して、企画を練っていく中で、22番やジョーといったキャラクターが生まれてきた」

いろんな考え方を、互いにポジティブに捉えていく点も特徴だ。

共同監督を務るパワーズ氏は、今度のアカデミー賞有力候補との呼び名も高い『あの夜、マイアミで』(1月15日9時よりAmazon Prime Videoにて独占配信予定)の原作となる同名舞台の戯曲を執筆した才人だ。

彼は、アフリカ系アメリカ人というアイデンティティーをベースに、本作に多くのものをもたらした。そのことに対してパワーズ監督は「すごく誇らしいよ」と満足げに語る。もともと彼は脚本家として、およそ12週間という期間限定で参加することになっていたというが、その貢献の大きさからコラボが長期間にわたるようになり、最終的には共同監督という肩書までを得ることになった。

「本当に最高だったのは、僕が口にしたアイデアにしっかりと耳を傾けてくれたということ。どの仕事でもそういうふうに意見を聞いてくれるとは限らないが、ピクサーでは温かく受け入れてくれた。だから密なコラボレーションをすることができた」(パワーズ監督)

アイデアを出し合って最高の作品をつくる

一方、パワーズ監督はドクター監督の独創的な物語作りにとても魅せられたという。

共同監督のケンプ・パワーズ氏はアカデミー賞の有力作品『あの夜、マイアミで』の脚本も務めている © 2020 Disney/Pixar.

「本当に夢のような体験だったし、最高のコラボレーションができた。ピクサーの最高峰のアーティストたち、ストーリーテラーたちと仕事をすることができた。みんながアイデア出しをする中で、最高のアイデアを生かした映画を作ることができて、みんな作品をすごく誇らしく思っていると思う。

それと僕は特にピートのストーリーテリングの大胆さが大好きなんだ。そうしたピートのストーリーに、自分の体験を取り入れていった。それは完璧にフィットしていた。ハリウッドでここまで完璧にフィットできるということはいつも望めるものではない」(パワーズ監督)

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