「ソウルフル・ワールド」でも健在のピクサー魂 配信公開切り替えでも世界中の視聴者を魅了

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そこは地上に生まれる前に「どんな自分になるか」を決める世界だったが、そこでジョーが出会ったのは、やりたいことを見つけられず、"人間に生まれたくない"と何百年もソウルの世界にとどまっている"22番"。地上での人生を取り戻したいジョーは、22番に協力を求め、奇跡の大冒険を繰り広げる――。

<ソウルの世界>に迷い込む中学の非常勤音楽教師のジョー・ガードナーはプロのジャズ・ピアニストとしてデビューしたいという夢を持ち続けている © 2020 Disney/Pixar.

もともと本作は、アメリカでは6月の公開予定だったが、新型コロナの影響で11月に公開が延期となっていた。だがこの期間、アメリカでは新型コロナが収束する気配がなく、ニューヨークやロサンゼルスといった、アメリカの興行に大きな位置を占める大都市圏の映画館も長期にわたって営業ができない状態となっていた。

仮に他地域で映画館がオープンできたとしても、収容人数の制限などもある。そうした興行収入の面から、多くのハリウッド映画が公開延期となっていた。本作も同様に劇場での上映を断念し、「ディズニープラス」での全世界一律での配信公開に切り替えられることとなった。なお日本でも当初は12月に劇場公開を予定していたが、配信公開に切り替えている。

こうした決断になぜいたったのか。12月にドクター監督とパワーズ監督に話を聞く機会があったので、率直に聞いてみた。

タイムリーなテーマがある作品

ドクター監督は「ピクサーにとっては23本目の作品になるが、ピクサー作品として、劇場で公開されなかった作品はこれが初めて。最初はやはり悲劇的だなというふうに思っていた。しかし、何よりも安全第一だから。こういう形で皆さんに伝えることができて、今ではむしろ感謝している。この時期だからこそ観てもらいたい、タイムリーなテーマがある映画ですからね」とその心境を吐露する。

人間になる前の<ソウルの世界>で、何百年も人間になることを拒み続けているこじらせソウル22番(左)  © 2020 Disney/Pixar.

パワーズ監督も「最初はやはりショックだった。それはこの作品が上映されないということもあるが、それだけではなく、アメリカの映画館が営業できない状態にあるから。11月に公開を延期したのも、その頃には映画館が再開できるのではないかという期待があった。でもそれがかなわなかったということが非常にショックだった」とその思いは同じようだ。

しかし、ドクター監督もパワーズ監督もこの結果をポジティブに捉えようとしているようだ。

「これでよかったと思う。われわれは8000万人の家に、この作品を安全に届ける方法を持っていた。新型コロナの感染拡大が記録的に悪化している状況なのでそれはとてもラッキーなことだ。僕の愛する人たち、例えば両親などに、『僕たちの映画をサポートするために映画館に行ってよ』とはなかなか言えない。そんな状況だからこれは正しい判断だったと思う。さらに延期をして、いつ観てもらえるのかわからないような状態になるよりも、このときに観てもらうことでより響くメッセージがあるんじゃないかと思ったので、届けられてうれしい」(パワーズ監督)

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