そして、今は、まさにこの状況である。「コロナのワクチンがついに開発された!買いだ!ワクチンが出れば、小売流通などこれまでの負け組も回復する!」などと言って株が上がる。だが次の日には、経済指標が発表され、予想よりも悪く、失業者が高止まりだったりする。
その次の日には、新型コロナ感染者が急増し「ニューヨークやロンドンではロックダウン(都市封鎖)の可能性がある」などと報道される。すると、デジタル関連銘柄が上昇し、また経済対策期待が膨らみ、結局はオールドセクターも上昇する。そして、この上昇の流れに多くのトレーダーが追随する。
ここからわかることは、まず、今は明らかにバブルであるということだ。モーメンタムトレード、つまり「流れに乗る投資」が有効であり、多くの人が行っていることがバブルの証左であり、またバブルを実際に作っている。バブルをさらに膨らましている。
株式市場とは「期待だけが重要」な世界
ここに、最重要な事実が現れる。「バブルは作られている」のである。それを作っているのは、追随買い、という投資行動であるが、この投資行動を生み出しているのは、「株価はまだ上がるはずだ」という期待である。つまり、期待が買いを生み、買いが上昇となり、この上昇が期待をさらに膨らませ、それがさらなる買いを膨らませる。すなわち、期待が株価を動かしているのであり、期待が自己実現しているのである。
株式市場とは、期待が自己実現する世界であり、真実はどうでもよい。期待だけが重要であり、実体経済においては、事実を変えることはできないから、期待と現実が乖離していることこそが、株価と実体経済が乖離している現象を生み出しているのである。
そして、最後は、期待は裏切られ現実に引き戻される。それゆえ、期待によって生まれた株価は持続せず、結局は現実、すなわち、実体経済に引き戻されるから、「株式市場と実体経済は、一致するはずだ」「連動するはずだ」と主張する人が出てくるだろう。実際、教科書の議論はそういうことだ。
では、教科書と現実(あるいは現実の側を主張する私)は何が違うのか。教科書は必ずしも間違っていない。しかし、それは10年に一度のバブル崩壊のときにだけ実現する、ということであり、10年に1度だけ、正しくなる、というだけのことだ。
そして、その連動は、悲劇的でドラスティックなものであり、日々連動するわけではないのだ。ただ、それだけのことである。その10年に一度が今やってきていない、というだけのことなのだ。
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