なぜ株価と実体経済は連動しなくなったのか?理由は単純だ。財市場と資産市場は別の世界のものだからだ。
では別の世界とは何か? 要はおのおの生き物が違うのである。地球人と火星人ぐらい違う。
実体経済の市場においては、消費者と生産者がいる。資産市場には投資家とトレーダーがいる。前者の人々と後者の人々は別の生物であり、行動が一致する理由がない。それだけのことだ。
株式市場と実体経済が連動しない「小さな3つの理由」
この根本的な話をする前に、株式市場と実体経済が連動しない、他のいくつかの理由も説明しておこう。
第一に、現在株式市場で盛り上がっているのは、いわゆるGAFAMやそのほかのいわゆるネット関連、テクノロジー関連の新しい巨大企業と新興企業である。重厚長大産業の企業は、自動車以外はほとんど停滞しているといっても良い。伝統的なサービス業や小売・流通はコロナで沈んでいるし、航空、交通関連は言うまでもないだろう。
あくまで一部企業のバブルにより株式市場が膨張しており、これらの企業は将来の成長を期待した株価になっている。だから、足元の経済の動きとは連動しない。これが第一点目だ。いわゆる有識者が、今の乖離現象を説明するときに行う、最も一般的な説明である。
もうひとつ、より影響が大きいのは以下の話だ。すなわち、株式市場に上場しているのは大企業だけで、実体経済の景気を左右する大多数の中小企業が含まれていないからだ。大企業が儲かり、中小企業がそれに押されて潰れていけば、大企業の増益により盛り上がる株式市場と、中小企業の縮小、廃業で沈滞する実体経済の動きは乖離する。これが第二の理由だ。
さらに第三の理由は以下だ。21世紀に入って言われ続けてきた、資本と労働の間の分配率の変化である。
株式会社が利益を増大させ、それが資本家に配分され、労働者に配分されなければ、株式市場は盛り上がるが、実体経済の消費は縮小し、両者は乖離する。21世紀の特徴は、人的資本を蓄積した一部の著名経営者およびいわゆる勝ち組が、人的資本投資へのリターンとして多額の収益を得た。一方で、単純労働者の賃金はまったくと言っていいほど上がらず、配分が偏っているということである。
これが21世紀の格差社会であり、いわゆる資本家ではなく、起業家、経営者が富を独占している、という問題である。これが第三の理由で、資本家であれ、経営者であれ、株式市場関係者は富を蓄積し、それに無関係な人々は相対的に非常に貧しくなるということだ。よって株式市場が盛り上がろうと、実体経済はそれほど拡大しない。
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