日本一「スルーされる県」、静岡ご当地鉄道事情 途中駅や私鉄の沿線には見どころがいっぱい

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静岡市内には静岡鉄道静岡清水線が走る。静岡鉄道、かつて静岡県内にいくつもの路線を持っていたが、モータリゼーションの波にのまれて現役の鉄道は都市部を走る静岡清水線だけになった。

静岡市内の私鉄・静岡鉄道。バックにはうっすら富士山も(筆者撮影)

もとは清水港へのお茶輸送を目的に建設されたという静岡らしい歴史を持ち、今では大都市郊外の住宅地の中をゆく。途中の県総合運動場駅の近くには静岡草薙球場。沢村栄治がベーブ・ルースら名だたるメジャーリーガーをキリキリ舞いさせた逸話の残る伝説の野球場である。 

静岡鉄道と似たような位置付けなのが、浜松市内を走る遠州鉄道だ。こちらも複数の路線を持っていたことがあるが、今は新浜松―西鹿島間のみ。地方私鉄の栄枯盛衰を感じてしまうが、“赤電”と呼ばれて親しまれる赤い車両は遠州鉄道のシンボルだ。

SL観光路線のパイオニア

県内の鉄道で観光を、というならば迷いなく大井川鉄道である。起点は東海道線の金谷駅。茶畑の中、その名の通り大井川に沿って北に走るローカル線で、走れば走るほど秘境へと突入していく車窓の移り変わりは実にダイナミック。そして大井川鉄道といったら蒸気機関車「SLかわね路号」だ。

大井川鉄道は静岡のみならず全国屈指の観光路線だ(筆者撮影)

1970年代からSLの復活運転に取り組んで、自然災害にも経営難にもコロナにも負けずに今も走り続けるSLのパイオニア。今では首都圏でも気軽にSLに乗れるようになっているが、ファーストペンギンに敬意を表して一度は足を運んでおきたいものである。

さらに千頭―井川間の井川線となると、SLとはまた違った独特な山岳秘境路線の旅を楽しめる。途中で補助機関車をつけてラック式の線路も走り、人里離れた秘境駅が連続する、乗らねばもったいない絶景路線の1つと言っていい。

そんな全国にとどろく観光路線・大井川鉄道も、沿線人口は減って経営は厳しい。観光に路線存続の望みを託して今日も今日とてSLがゆく。静岡県はそこそこの規模の都市が多く、東海道線を通っている限りでは過疎感は感じないのだが、やはり地方都市の厳しさはこうした地域でも直面しているのである。

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