そうしたわけで、青春18きっぷでこの区間を抜けようとするとつらい気持ちになってしまうのだが、よくよく途中の駅を見てみよう。熱海から苦難の末に開通した丹那トンネルを抜けると三島。沼津は静岡東部の中心地で某大ヒットアニメの舞台としても有名だ。
富士駅あたりでは製紙工場が煙をくゆらせ、その向こうに富士の山。薩埵(さった)峠を越えて清水は清水次郎長と「ちびまる子ちゃん」でおなじみで、静岡駅を後にして安倍川を渡れば日本屈指の大漁港・焼津だ。
牧之原台地の茶畑を見ながら続く掛川は二宮尊徳の報徳思想の町で、野外ライブの聖地・つま恋リゾートも。ラグビーW杯の舞台にもなったエコパスタジアムは愛野駅のほど近くだ。御厨(みくりや)駅は2020年3月14日、高輪ゲートウェイと同日に開業した新駅で、Jリーグ・ジュビロ磐田が拠点とするヤマハスタジアムの最寄り駅となっている。
楽器と自動車産業の街・浜松を過ぎれば浜名湖の南端「今切の渡し」を電車に乗ってひとっ飛び。うなぎの養殖場を眺めつつ、静岡県の旅は終わりを告げる。
個性豊かな私鉄路線
こうしてみると、途中のそこかしこで電車を降りて散策を楽しんでみてもいいような気がしてくるではないか。さすが天下の東海道、どの街も歴史あり名物ありで見どころが少なくない。それに、主要なターミナルからは決まって他の鉄道路線が延びていて、そちらに乗ってみるという楽しみもある。
まずは吉原駅で分かれる岳南電車。富士市内を走る小さな小さなローカル私鉄で、途中では工場の中を抜けて通るような区間もあって、富士市が屈指の工業都市であるということを実感できる。
終端の岳南江尾駅に近づけば、工業地帯から抜けて静岡らしい茶畑も見え、もちろん富士山も望める。
さらに富士駅からは身延線というJRのローカル線も延びている。北に進んで焼きそばでおなじみ富士宮を経て、富士川に沿って富士山の西側を北へ向かって最後は山梨県甲府市へ。静岡県と山梨県を直接結ぶ、唯一の鉄道路線だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら