JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と、JR東海の見解

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■インタビューを終えて

難しい技術をわかりやすく伝えるというのが川辺氏の信条だけあって、川辺氏の著書によって超電導の技術やその問題をきちんと理解することができた。著書に記されている内容についても、基となる文献の出典も丁寧に紹介されている。また、鉄道、リニア、航空の現役、OBの技術者ともディスカッションを繰り返したという。

では、川辺氏の指摘についてJR東海はどのように考えているか。同社に確認を取ったところ、以下のような回答があった。

「クエンチについては、山梨リニア実験線で実験の目的上、意図的に起こしたことはあるが、意図せずに起きたことは1度もない。また、1999年の新聞報道については、車両が停止するトラブルは起きたが、その後の調査で原因は冷却材の配管の亀裂による真空度の低下に伴う温度上昇が発生し、磁力が低下した事象であり、超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」。

さらなる情報開示が必要では

では、MRIではクエンチが起きているのに、超電導リニアでは1度も起きていないのはなぜか。この点を尋ねたところ、「MRIとの比較はしてないので違いについては説明できないが、超電導リニアは宮崎実験線以来長年にわたってクエンチが起きないように研究を重ね、改良を続けてきたので、その成果である」という回答があった。

また、「L0系にはトイレが付いている」とのことで、高速走行中にトイレが使えないということも「絶対にない」という。体験乗車の際は、「L0系は試験車両であることからトイレは1両しか設置されておらず、乗車イベント等の際は、乗車前にトイレの利用を促しているだけ」ということであった。

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現在の走行試験でL0系の両方の先頭車両が初期型と改良試験車に分かれている理由は、「乗り心地の改善に向け初期型を先頭にした走行と改良試験車を先頭にした走行を比較検証するため」であり、ガスタービンを用いている理由は、「誘導集電に必要な地上ループは技術開発に必要な一部の区間にのみ敷設され、実験線の42.8km全線に敷設していない」ためで、誘導集電に関する技術が磨かれていないということはないとしている。また、山梨実験線に立っている架線柱のようなものは、「架空地線という避雷設備」で、役割としては避雷針のようなものだという。

JR東海の回答からは走行試験は順調に進んでいることがうかがえるが、川辺氏のように技術に明るい人からも疑問の声が上がるのは、情報開示が不完全だからだろうか。

とはいえ、先端技術の情報開示は難しい。中国も超電導リニアの開発に乗り出している中、高度な技術をあからさまに開示するのは競争上得策ではない。逆に、完全な秘匿は疑心暗鬼を生む。

難しい問題だが、国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない。それは、膠着状態にある静岡工区の未着工問題においても同様だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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