《プロに聞く!人事労務Q&A》デザイナーに裁量労働制を適用することは可能ですか?
回答者:雇用システム研究所 白石多賀子
服のデザイナーが該当する裁量労働制は、専門業務型裁量労働制です。
専門業務型裁量労働制は、労働者に業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等の裁量を委ねる必要がある場合に適用されます。
対象業務は、法令により19業務が定められていますが、服のデザイナーが該当するのは、「衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務」です。
衣服のデザインの考案に該当するのは、「デザインを一から立ち上げる」業務をおこなう者のことで、主たるデザイナーが考案したデザインに基づき、単に図面の作成、製品の制作等の業務を行う者で補佐、アシスタントは対象ではありません。
制度導入するためには、労働者の過半数で組織する労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者と書面による労使協定を定めなければなりません。そのうえで、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」により、所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
また、労使協定については労働者に周知しなければなりません。なお、就業規則にも専門業務型裁量労働制を記載します。
●労使協定事項について
【みなし労働時間】
協定で定める時間は、その業務を遂行するために通常必要とされる1日の時間です。たとえば、9時間が必要であれば、法定労働時間である8時間を超える部分は時間外労働となるため割増賃金の支払いが必要です。 なお、裁量労働制であっても、休憩時間、深夜業、休日などの規定は適用されます。
【健康・福祉確保の措置】
労働者に業務遂行の手段や方法等の裁量を委ねていますが、使用者は対象労働者の健康状況を把握することが必要です。対象労働者の勤務状況等の把握、健康状態の定期的なヒアリング等で健康状態を把握することが望ましいです。
【苦情処理措置】
苦情の申し出の窓口および担当者、取り扱う苦情の範囲、処理の手順・方法等を明らかにすることが望ましいです。
東京都社会保険労務士会所属。1985年に雇用システム研究所を設立。企業の労務管理、人事制度設計のコンサルティングを行う一方で、社員・パートの雇用管理に関する講演も行っている。東京地方労働審議会臨時委員、仕事と生活の調和推進会議委員。著書に『パート・高齢者・非正社員の処遇のしくみ』(共著)。
(東洋経済HRオンライン編集部)
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