台湾がコロナ禍で介護労働者不足の危機に 介護職支えるインドネシア人を入国制限

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ところで、今回、入国規制の対象になったインドネシア人は、観光目的で渡航するのではない。台湾で働くためにやって来る、いわば台湾経済の一翼を担っている労働人材にあたる人々だ。そのため、仮に入国禁止措置が長引いてしまうと、それだけ台湾国内の経済にも影響が出る恐れがある。

台湾における外国人労働者の公式な受け入れは、1991年の政府の建設プロジェクトに約1000人のタイ人建設者を受け入れたことに端を発する。その後、増減をくり返しながらも拡大していき、現在の69万9000人規模になった。1人の女性が生涯に産む子供の数「合計特殊出生率=TFR」が1.0近辺で低迷する中、外国人労働者の受け入れは、もはや議論の余地がないほど当たり前のこととなっているのだ。

その中で、現在では介護人材の多くをインドネシア人が担っている。その数は20万人以上といわれ、介護職に携わる外国人労働者の実に8割だ。今回の入国禁止措置が延長されるような事態に発展した場合、介護施設をはじめとしたさまざまな場所での人手不足が起こりかねないのだ。

台湾の介護職を支えるインドネシア人

なぜインドネシア人が多く介護職に携わっているのか。一つにはインドネシア政府の積極的な労働者の送り出し政策の整備と、台湾社会におけるインドネシア人の「従順・管理しやすい」といったイメージ、さらには台湾政府とフィリピン政府間の外交的な摩擦と、フィリピン側の専門・技術労働者の送り出し政策の推進などがある。勉強熱心で、ほとんどがイスラム教徒でヒジャブを着用していることから、台湾人社会では見分けが付きやすいというのがインドネシア人労働者のイメージなのだ。

しかし、このイメージの裏にある問題は、これから外国人労働者の受け入れを検討する際に社会全体で向き合い、考えなくてはいけないことでもある。

2003年当時、台北に語学留学していた筆者の友人は、家政婦業に従事している労働者が高齢者の介護も行っており、かつ劣悪な労働環境下に置かれていることが多いことに憤りを感じ、台湾社会の矛盾を大いに感じたという。挙句に友人は、「日本人はやさしいから外国人労働者を扱えないだろう」とまで雇用主の台湾人に言われ、何とも言えない気持ちになったそうだ。

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