リーマン出身幹部が次々と流出、野村ホールディングスの試練
その契約が切れる今月に退社が相次ぐことは当初からある程度想定されていたが、欧州・アジア地域の重要ポストにある幹部の相次ぐ離脱は、野村の今後の収益にとってかなりの痛手となる可能性がある。
バンフィールド氏と同じアジア地域の投資銀行部門共同ヘッドには、リーマン出身のパトリック・シュミッツモークラマー氏と野村プロパーの星野雅英氏がいる。ただ、シュミッツモークラマー氏は今年1月にドイツ・オーストリア地域の投資銀行部門ヘッドから異動したばかり。星野氏も昨年4月に企業金融七部長から移ったばかりであり、アジアにおけるM&Aに関しては、バンフィールド氏の力に頼っていた。
09年において野村は、韓国の錦湖アシアナグループの部門売却や、KKRによるインベブの韓国ビール部門買収でのアドバイザー、中国投資有限責任公司(CIC)によるJSCカズムナイガスへの資本参加で単独アドバイザーを務めるなど実績を挙げ、海外金融専門誌から中国、台湾、韓国での「ベストM&Aハウス」にも選ばれている。
旧リーマン幹部以外でも、アジアの通信・メディア・テクノロジー業界投資銀行部門ヘッドのロバート・チュー氏の退社が明らかとなっている。同氏は、昨年1月にメリルリンチ(バンクオブアメリカ傘下)から野村に移籍したが、今月再びメリルに戻った。
リーマン出身者を経営会議メンバーへ昇格、流出防止が目的か
こうした幹部流出さなかの3月17日、野村は投資銀行部門やトレーディング部門などグローバルな法人業務を統括する「ホールセール部門」を4月1日付けで新設、その会長兼CEOにグループ執行役副社長の柴田拓美氏を充て、プレジデント兼COOとしてリーマン出身でアジア部門会長のジャスジット・バタール氏を任命すると発表した。
バタール氏(インド出身)は同時に、リーマン出身者として初めて、野村グループの最高意思決定機関である経営会議メンバーとなる。バタール氏は投資銀行業界で25年の経歴を持ち、野村移籍前はリーマンのアジア太平洋地域のCEOを務めていた。
このタイミングでのバタール氏の昇格について金融界では、「リーマン出身者を出世させて、これ以上の流出を食い止めようという狙いだろう」との憶測も出ている。