HIS、初の赤字で漂う「旅行の店頭販売」の限界 新型コロナの拡大前から課題だった市場の変化
海外旅行事業で最も回復が早いと見ている地域は主力のハワイ。次に台湾やシンガポールなどのアジア、そしてグアムの順に回復するシナリオで、これら3地域が大きなボリュームを占めるという。ただ、ワクチン接種や各国の渡航制限などで需要が変化することもあり、明確な数値目標は公表しなかった。
注力するのは引き続き国内旅行だ。前期の売上高230億円から3倍への成長を目指す。海外旅行の人員を国内に振り向けており、GoToトラベルの活用、商品の拡充を進める。2023年には売上高1600億円とする目標もぶち上げた。「海外の減少を受けて国内でしのぐ」のではなく、国内需要を成長領域として取り込む考えだ。
同時にネットシフトも急ぐ。国内店舗の統廃合を進め、11月~2021年1月に58店舗を閉店し、154店とする。ウェブ上での接客など商品販売のデジタル化の取り組みは2021年1月からテストを始める。
資金繰り次第でハウステンボス売却も
そのほか、ホテルは夏場以降の改善、ハウステンボスは通期で黒字化を見込む。九州産交グループも回復基調だ。エネルギー事業も順調に契約を積み上げている。前期途中から実施してきた人件費や宣伝費削減の通期化などコスト削減も進め、「下半期からの連結黒字化は見えている」(澤田会長)。
投資計画の見直しや財務の路線変更も発表された。拡大基調だったホテルの開業計画は、契約済みや延期している物件は継続するが、2023年以降の開業は停止。コロナ影響が長期化すれば、契約済み物件もキャンセルする可能性がある。賃貸ビルなどの不動産も投資を取りやめ、売却を進める。
当面の資金繰りについてはコミットメントラインを330億円、当座借越枠も30億円確保していることから「今期、来期の流動性の問題はない」(財務担当の中谷茂取締役)とする。ただ、「ハウステンボスを売却すると700億~800億円になる」(澤田会長)、「本社も資産なので考えていく可能性はある」(中谷取締役)と、キャッシュの充当へ主要な資産の売却をにおわせる発言もあった。
さらに、業況がコロナ以前まで回復したとしても、有利子負債を圧縮する方針を明らかにした。2014年頃から借り入れを活用してホテル事業などの設備投資を進めてきたが、「今回、いろいろと感じることがあったので、また無借金にしてもいいかなと思っている」(澤田会長)、「旅行事業のモデルを再構築して(負債を)減らし、長期的には無借金にもっていく」(中谷取締役)とし、借り入れを伴う拡大路線から転換する考えを示した。
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