菅首相、迷走するGoTo事業停止の重すぎる代償 事実上の「政策失敗宣言」、問われる首相の器

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菅首相の方針転換は、GoTo事業継続に対する国民世論の反対が12月中旬に拡大したことが最大の原因とされる。しかも、そのきっかけとなったのが11日の菅首相の不用意な発言だった。

菅首相は11日午後、インターネット動画の「ニコニコ生放送」に出演した際、視聴者に対し「みなさん、こんにちは。ガースーです」と笑顔であいさつした。「国民に親しみを持ってもらう狙い」(首相周辺)とみられたが、動画中継の画面には「今はそれじゃない」「余りにも無神経」など書き込みがあふれ、ネット上での大炎上となった。

菅首相の出演は、11日のコロナ分科会後に尾身茂会長が記者会見で「Go Toトラベルの見直し」を切々と訴えたのとほぼ同時進行だった。対談形式で国民に直接訴えるのが目的だったが、「完全にスベった」(民放幹部)のは間違いない。この動画は同じ時間帯の民放テレビ情報番組でも中継されていたが、居並ぶコメンテーターたちも苦笑と困惑を隠さなかった。

「不支持」が「支持」を初めて逆転

菅首相の出演は約30分間だったが、その中で「Go To一時停止」については「そこは考えていません。今日提言を受けたわけですから」と表情も変えずに語り、「いつの間にかGo Toが悪いことになってきちゃったんですけど、移動では感染しないという提言もいただいていた」などと「Go To悪者説」への不満もあらわにした。

この動画は瞬く間にインターネットで拡散。翌12日未明には立憲民主党の蓮舫参議院議員が「いつの間にかGo Toが」発言をツイッターに引用し、「税金で旅行を後押しする政策を力強く進めてきたのは貴方の政権です」と投稿。さらに、ドイツのメルケル首相の「クリスマスで人々の接触が増えれば、祖父母たちとの最後のクリスマスになることもある」との言葉を引用し、「胸に響きます。国民に危機意識を伝える言葉です」と菅首相の不用意な発言と対比して批判した。

4月には当時の安倍晋三首相が自宅でくつろぐ様子を「コラボ動画」として発信して大炎上し、与党内からは「今回はそれ以上の国民的反発」(自民幹部)との声も相次ぐ。野党側は「菅さんはまさに、KY(空気が読めない)の典型」(立憲民主党)と批判を強めた。

当然、世論の反応は敏感で、12日の毎日新聞の世論調査では内閣支持率が17ポイント下落の40%、不支持は13ポイント増の49%と、菅政権発足以来初めて、支持と不支持が逆転した。

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