日本人が知らない「ミッキーマウス」誕生秘話 ディズニー帝国成功の秘密は「4つのC」にあった

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このときのディズニーは、発足したばかりの会社を倒産させてしまい、自分を見失っていたのです。継続(Constancy)の大切さを思い出し、アニメ制作を続けるべきだと思い直します。書き溜めていたギャグを活かした短編アニメ映画の制作に挑んだのです。

加えて、以前、彼の映画に興味を持ってくれたニューヨークの映画配給業者M・J・ウインクラーという女性社長に手紙を書きました。すると、彼女は1本1500ドルで6本買いたいと返事をくれました。ロイと喜びを分かち合い、2人は会社を立ち上げます。会社には盟友のアイワークスたちアニメーターも加わります。

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今度は無事に代金も回収でき、会社は軌道に乗りました。しばらく後、ニューヨークの配給業者はウインクラーの夫ミンツが経営を引き継ぎました。ミンツも変わらずディズニーにアニメ映画の発注を続けました。

会社経営が順調となり、ディズニーとロイは家庭も安定させようと結婚しました。スタジオも大きくします。そして、社名を「ディズニーブラザーススタジオ」から「ウォルト・ディズニー・スタジオ」に変更しました。兄弟が仲違いしたからではなく、ロイが「このほうが響きがいい」と提案したのです。

「ミッキーマウス」誕生秘話

ところが、暗雲がたちこめます。ミンツが買い取り額の引き下げを要求してきたのです。配給してくれないことには商売になりませんから、このときはやむなく条件を呑みました。受注額の引き下げは痛手でしたが、ディズニーは作品の質を高めます。その上で契約更新のため、ミンツを訪れます。

ディズニーは受注額のアップを期待していたのですが、なんとミンツはさらなる値下げを要求しました。それどころか、応じないならディズニーのアニメーターたちを引き抜き、自分の会社で制作すると脅します。

実際、ディズニーが拒否すると、ミンツはアニメーターたちを引き抜いてしまいます。信頼したアニメーターたちに裏切られ、ディズニーはショックを受けました。しかし、彼は希望を捨てませんでした。

今こそ「4つのC」を発揮するときです。ディズニーは、新しいキャラクターを創造しようと、スケッチブックに向かいます。そこででき上がったのが「ミッキーマウス」でした。

ウォルト・ディズニーとミッキーマウス(写真:Mondadori Portfolio/Getty)

スタジオに戻ると、ただ1人残っていた盟友のアイワークスと、ミッキーのキャラクターを深めていきます。やがて、ミッキーマウスは世界中の子どもたちに受け入れられました。

この後、ディズニーは快進撃を続けます。失敗を重ね、苦境に陥りながらも「4つのC」で人生を逆転させたウォルト・ディズニー、今もなお、世界中の子どもたち、いえ、大人たちにも夢見ることの素晴らしさ、夢を叶えるための努力の尊さを教えてくれています。

早見 俊 小説家

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はやみ しゅん / Shun Hayami

1961年、岐阜県岐阜市に生まれる。法政大学経営学部卒。会社員を経て作家活動に入る。日本文藝家協会会員、日本推理作家協会会員、日本文芸家クラブ会員、歴史時代作家クラブ会員。「居眠り同心 影御用」(二見時代小説文庫)、「佃島用心棒日誌」(角川文庫)両シリーズで、第6回歴史時代作家クラブ賞シリーズ賞を受賞。『うつけ世に立つ 岐阜信長譜』(徳間書店)にて、第23回中山義秀文学賞にノミネート。ほかに「御蔵入改事件帳」シリーズ(中公文庫)や「闇御庭番」シリーズ(光文社時代小説文庫)など著作は200冊を超える。

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