――修正主義者は憲法を日本敗北の象徴であり、日本は主権国家以下だと見ているふしがある。
一般的に言って修正主義者にとって憲法は占領軍に押し付けられたという苦々しい気持ちを長いこと抱いている。事実問題として彼らは間違ってはいない。日本は従属国家のように扱われているとか、従属国家のように振る舞ってきたという感覚が右翼の人たちのなかにあり、いまはそれを変えるべきだという。彼らにとって、“普通の国”になることは米国に対して外交政策をすべて方向転換せよと言っているわけではない。日米の国益がしばしば整合的でないということでもない。日本の米国に対する信頼感や依存心について憤慨する人たちは、日本はもう少し独立し、合法的になったほうがいいと感じている。
修正主義者も実践主義者も両者とも日米同盟を支持している。違うのは日本の過去についてと、“普通の国”とはどういうものかという点だ。安倍首相を含めて修正主義者の“普通の国”には、20世紀中盤の日本に対する共感が多く含まれている。実践主義者はリアリストとして、挑発的ではない“普通の国”の日本を嗜好している。
集団的自衛の利点は何か
――安倍首相は集団的自衛や日本の独立性を唱えているが、軍事力の必要性を政治的徳目として強調してはいないのでは。
そうかもしれないが、憲法解釈によって集団的自衛を容認することは日本にとって実利があり、米国にとっても利益がある。問題は修正主義者のパッケージで包まれていることだ。その修正主義者はフロントガラスから前方を見るのではなく、バックミラーを見ながら前に進もうとする日本の指導者と結びついている。近隣諸国から日本の意図は簡単に誤解されてしまう。日本が東アジア地域のリーダーとして信頼に足る繁栄した国家とはみなされない。
――日本にとっての利点は何か。
日本にとっては「目に見える」利点と「目に見えない」利点がある。目に見えない利点は次のようなものだ。
① 有効性:“普通の国”として目的を達成する実感が高まる。
② 威信:米国との関係がより平等となり、従属国家としての役割ではなく、北大西洋条約機構(NATO)のパートナーのような機能を果たせるようになる。
③ 文民統制による軍隊に対する合法性が高まる。
④ 安心感:集団的自衛によって米国の包容力が強まり、日本に対する米国の関与に信頼性が高まる。
一方、目に見える利点は次のようなものだ。
① 軍隊の継続的進化を容易にする。日本は1980年代に自国防衛海域を1000海里に拡大した。1990年代には中東湾岸へも展開した。過去10年、日本は「限りなき自由作戦(OEF)」支援や中東湾岸での多角的な海賊撲滅作戦に参加してきた。それには法律上も軍隊派遣上もかなり大きな変更がなされている。集団的自衛の容認に伴ってこの種の進化はさらに進み、その進化を達成することが容易になる。例えば、水陸両用能力拡大、諜報能力改善などだ。
② 総じて抑止力が強化される。
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