社員全員「業務委託」にした会社に起きた変化 大企業によるジョブ型導入の相談も増えている
白井氏は、外部人材だけでなく、現社員にも「金銭メリット以外の訴求ポイント」を打ち出せるかどうかがカギになると語る。
「会社依存のメンバーシップ型がなくなり、ジョブ型による労働市場が活性化されると、会社はこれまで以上に“見られる”ようになります。労働環境はもちろん、ビジョン、ミッション、キャリアデザインが描けるか……。就職したからOKではなく、働き始めてからも、会社は常に“品定め”されているという意識を持たなければなりません」(白井氏)
新型コロナの影響で、日本企業の多くがテレワークを余儀なくされ、柔軟な働き方が承認されたのは、思わぬ前進だった。
「ジョブ型」か必要が見極めるのが重要
そして次は、「雇用のあり方」が根幹から見直されようとしている。経団連は今年1月、「経営労働政策特別委員会報告」において、2020年には「メンバーシップ型」と「ジョブ型」の組み合わせを推し進めていくと提起した。必要性に応じて、少しずつ雇用制度を変えていくという考えなのだろう。
しかし、ジョブ型がその企業に本当に必要なのかどうかは、慎重に見極める必要がある。雇用制度の変革は、マネジメント、評価制度、給与、事業構造など、さまざまな範囲に影響が及び、失敗したときの損害ははかりしれない。
先述したモノづくり産業のように、メンバーシップ型の雇用がフィットする産業もあるだろう。時勢に惑わされることなく、自社の資本力や産業領域を見極めたうえで、慎重に行っていく必要がある。
また、会社に勤める個人も、考えなければならないことがある。自分の会社はどのような雇用制度が向いているのか、分析したうえで、「キャリア自律」を早急に行うべきか、判断しなければならない。
能力やキャリアによって処遇格差が広がるジョブ型では、いちはやく自分の武器やポジションを見定め、バリューを発揮できなければ、いつまでも賃金を上げることができない。この点で、優秀層と非優秀層の間に生まれる格差も、社会が向き合っていかなければならない課題となるだろう。
いずれにせよ、変化のタイミングが訪れている。コロナの余波は収まらないが、このパンデミックを契機にできるのか、判断すべきときが近づいている。
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