英国「7つの階級」調査が教える政治のあり方 新しい不平等の台頭に政治はどう対応するか

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さらによく考えると、なぜこのような強力な階級の区分がこのとき行われていたのかがわかるだろう。この時代は、イギリスで最後の大規模な産業紛争が起こった時期で、保守党政権が鉱山閉鎖計画に激しく反対する鉱山労働者組合の強力な結集に直面し、イギリスの政治は1年中、鉱山労働者のストライキに支配されていた。

1979年に史上最高の1300万人に達していた労働組合員数は、1983年時点でも1200万人を超えていた。労働人口の半数近くが労働組合に加入し、労働争議はニュース番組に頻繁に取り上げられていた。

深刻な不況のため、失業者数は1970年代後半の150万人から1980年代半ばには300万人を超えた。1930年代以降最悪の数字だ。この打撃は製造業の肉体労働者に降りかかった。このような状況では、労働党と保守党の支持に階級による著しい偏りが見られたのも不思議ではないだろう。

様変わりした政党支持の状況

時を移して、2010〜2011年の正確で比較可能なデータを見てみよう。30年弱の時間の経過で、政治状況は大きく変わった。この間、保守党政府(1979〜1997年と2010〜2014年)と新ニューレイバー(新しい労働党)政府(1997〜2010年)で二度の政権交代があったのだ。

労働組合員の数はピーク時の半分近い700万人まで減少し、かつて組合員の象徴と考えられた鉱山労働者、鉄道労働者、港湾労働者、鉄鋼労働者に代わって、公共部門の専門職が中心となっている。社会経済状況も大きく変化し、公共施設の大規模な民営化プログラムは公共部門の規模を根本的に縮小し、福祉の分野にまで市場原理が及んできた。経済はサービス部門と金融に圧倒的に依存するようになった。

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