フェリシモが「猫グッズ」を作り続ける深いワケ 「猫の肉球」の香りがするハンドクリームとは?

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民間の保護猫活動団体の努力のひとつの結実でもあり、その実現には、フェリシモの企業としての支援も大きな力となったことだろう。

これまで、かわいらしい猫グッズや、SNS映えする猫用品で多くの支持を集めてきた猫部。いわば、人間から見た猫の魅力で、ファンの共感を得てきたと言えるだろう。そして今、新たな挑戦を始めている。「猫の健康」をテーマにした商品だ。

採尿キット付き「猫用サプリ」の課題

それが、2020年9月15日に発売した猫用パーソナルサプリメント「NEKONA」だ。尿検査をし、それに基づき5種類のサプリから最適のサプリメントを提案するもの。猫用サプリというだけでも新しいが、さらに尿検査を踏まえ個々の猫に対応するというのだから、画期的な発想と言える。

猫用パーソナルサプリ「NEKONA」(採尿キットつき5463円、1カ月分サプリ4366円)。「猫らしさ」で共感を呼んだグッズから、「猫の健康」に目を向けた商品へ。猫と人の共生社会に向け新しい挑戦を開始した(筆者撮影)

商品は採尿キットと1カ月分のサプリメントで5463円。次の月からは1箱4366円でサプリメントを継続購入できる。飼い主が自宅でサンプルをとり、ラボに送ると、ストレス値や尿の状態をチェックし、猫が起こしやすい尿路疾患などに早めに気づくこともできる。

飼い猫の健康を気にしているが、獣医に連れていく負担の大きさから、つい行きそびれているという飼い主は多い。また、猫の健康や病気に関する情報はいろいろあるが、医師でもない飼い主が猫の行動などから見極めることはなかなか難しい。健康のために何をしたらよいかわからない。同商品はそうしたニーズに応えるものだ。

ただし課題も多い。フェリシモという会社自体にとっても未知の分野であるため、健康食品のメーカーや検査機関といった取引先も、一から探す必要があった。また、これまでにない商品のため、販売チャネルに対してメリットを訴求しにくく、効果的な宣伝を打てないこともハードルとなっている。そうした理由から、販売がなかなか軌道に乗らないところだ。

ペット用品ショップとの連携など、また新しい作戦が必要となってくるだろう。「猫と共生する社会」をテーマとした、ビジネスの輪が広がっていきそうだ。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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