コロナ禍でもウォルマートが強みを見せた理由 新宅配サービスを即発表したアジャイル型組織

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しかし、日本企業にとってアジャイル型組織への変革は容易ではない。というのも、アジャイル型組織の導入は組織文化の大きな変革であり、人材育成・評価、マインドセット、スキルセット、関連する社内制度──これらを含めてアジャイル型組織に適応させる必要があるからである。日本企業をアジャイル型組織に変革するには大きく3つの課題がある。

組織の自律的運用は部門横断が前提

①経営層や事業部門への理解醸成

第1の課題は、アジャイル型組織に対する経営層や事業部門の理解の醸成である。アジャイル型組織は、システム開発の手法が基盤であることから、情報システム部門を中心に広がりつつあるものの、経営層や事業部門の理解は必ずしも十分でない。

組織の自律的運用は部門横断が前提であり、事業部門と情報システム部門が一体とならなければ、変化にすばやく対応できない。例えば、事業部門が開発を情報システム部門に丸投げし、アジャイル型組織に参画していない場合、アジャイル型組織がどれだけ努力をしても事業部門のニーズを満たすことは難しい。加えて、経営層が理解していないと、アジャイル型組織の活動に必要な環境が得られないおそれもある。部屋や設備など、必要なツールを活用できる開発環境である。

経営層や事業部門の理解を深めるには、「CoE(Center of Excellence)」と呼ばれる変革推進タスクフォースを通じてアジャイル型組織の考え方を広めることが有効である。CoEも、組織横断的なメンバーで構成され、組織全体に向けアジャイル手法の理解促進・啓発活動を行う。さまざまな関係者が、変革を「自分事」として捉えることができれば進めやすくなる。

経営層や事業部門の巻き込みには、組織内で影響力の大きい人材に対して、アジャイル型組織の考え方や実践方法についての丁寧なコーチングを実施することも有効である。

次ページ第2、第3の課題
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