「病気になりやすい職場」「なりにくい職場」の差 上司の質で「心臓病になるリスク」まで変化する

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ちなみに、職業によっても病気になるリスクに違いがあるという報告もあります。スウェーデンの研究で、バス運転手、タクシー運転手、トラック運転手の心筋梗塞のなりやすさをほかの職種と比べたところ、特にストックホルム市内のタクシー運転手とバス運転手のリスクがいちばん高いことがわかりました。

ほかの職種に比べてタクシー運転手で1.65倍、バス運転手で1.55倍も心筋梗塞のリスクが高かったのです。さらに、これらの関連は喫煙や体重などの因子とは関係なく見られました。これらの運転手の8割は職業ストレスが高いことが知られており、職業ストレスの影響だと考えられています(Gustavsson P, et al. Occp Environ Med.1996)。

上司の質で「心臓病になるリスク」が変わる

上司からのストレスに悩んでいる人は多いでしょう。実際、職場の上司との関係に悩み、うつになってしまう人があとを絶ちません。あなたの上司がどんな人かによって、うつどころか、心臓病になるリスクまで上げるかもしれないといったら、驚かれるでしょうか。

『感情を“毒”にしないコツ』(青春出版社)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

上司のリーダーシップと部下の虚血性心疾患の発症との関係を調べた研究があります。部下に以下のような質問を投げて回答してもらいました。

①私の上司は私が必要な情報を与えてくれる(情報提供)
②私の上司は仕事の目標を明確に示してくれる(目標提示)
③私の上司が私に何を期待しているのかを把握している(期待)
④私の上司は部下の育成と管理に十分な時間をかけてくれる(育成管理)

その回答結果から虚血性心疾患発症の相対危険度を調べました(図表13、年齢調整済み。スウェーデン人3122人を9.7年間追跡調査した研究)。

『感情を“毒”にしないコツ』(青春出版社)より

「情報提供」してくれる上司がいる部下のリスクは0.65倍、以下「目標提示」は0.61倍、「期待」は0.77倍、「育成管理」は0.69倍と、いずれも低かったのです。つまり優秀な上司のもとで働いている部下は、そうでない人に比べて心臓病になるリスクが23〜35%低いということになります。

上司は基本的に自分で選ぶことはできませんが、今、上司との関係でストレスを抱えている人は、自分の健康のためにも、部署の異動、あるいは転職を真剣に考えてもいいのではないでしょうか。

大平 哲也 福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授

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Tetsuya Ohira / Tetsuya Ohira

福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授。同放射線医学県民健康管理センター健康調査支援部門長。大阪大学大学院医学系研究科招へい教授。日本笑い学会理事。福島県いわき市生まれ。福島県立医科大学卒業。筑波大学大学院医学研究科博士課程修了。大阪府立成人病センター、ミネソタ大学疫学・社会健康医学部門研究員、大阪大学医学系研究科准教授などを経て現職。専門は疫学、公衆衛生学、予防医学、内科学、心身医学。

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