「病気になりやすい職場」「なりにくい職場」の差 上司の質で「心臓病になるリスク」まで変化する
また、仕事のストレスが高いと脳卒中になりやすいという日本のデータもあります。ストレスがもっとも低い「要求度が低く、コントロール度が高い仕事」を1とすると、ストレスがもっとも高い「要求度が高く、コントロール度が低い仕事」は、脳卒中になるリスクが2.73倍も高くなるという研究結果が得られました(図表11、日本人従業員6553人を11年間経過観察した研究:Tsutsumi A,et al.Arch Intern Med.2009)。
「仕事のコントロール度」だけで比較した別の研究では、「仕事のコントロール度」が高い人を1とすると、「仕事のコントロール度」が低い人のほうが、自殺が4.1倍も高いことがわかりました(図表12、日本人従業員男性3125人を9年間経過観察した研究:Tsutsumi A, et al. Psychother Psychosom.2007)。
仕事を自分のペースでおこなえることも、ストレスを左右するということです。
ただ難しいのは、自分のペースではなく、決められた仕事をきちんとおこなったり、単純作業を繰り返したりするのが好きだという人も一定数いるということです。そういう人にとっては、自分の裁量でおこなうことがストレスになります。
仕事のストレスを緩和する方法
一方、「要求度が高く、コントロール度が低い仕事」に就いている人はどのように対処したらよいのでしょうか。
その1つは、ソーシャルサポートです。カラセック氏らの研究によれば、たとえ職業ストレスが高い仕事であっても、上司や同僚、そして家族のサポートがあると、ストレスの影響が緩衝されて弱くなることを報告しています。つまり、仕事のストレスが多い職場こそ、まわりの人のサポートが病気の予防のために重要なのです。
逆に上司のサポートがないどころか、上司がストレスになっているような職場だと、より病気になる可能性が高くなります。
私は大阪で勤務していたときに、教員のメンタルヘルスにかかわる仕事をしていました。小学校、中学校の教員は、子どもたちの教育や生活の指導のみならず、親との対応などで年々ストレスが増加しています。
忙しくてストレスが多い職場であっても、校長先生や教頭先生など上司がしっかりサポートしてくれる学校では、教員のモチベーションが高くメンタルヘルスが保たれている印象を受けました。逆にうつ状態になってしまった教員の多くは、上司からの理解や支援がないことを強く訴えていました。
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