社名背負う新事業? DeNAがDNA解析へ 東大医科研と組んでヘルスケア分野に参入

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南場氏自らが、昨年7月から遺伝子解析研究のリーダー的存在である東大医科研に足を運んで連携を打診。当時南場氏と面会した東大医科研ヒトゲノム解析センターの宮野悟教授は、「DeNAの意思決定の速さに打たれた」と打ち明ける。研究成果の社会への還元を進めようとしている東大側にとっても、一般消費者相手にビジネスを展開するDeNAとの連携はメリットが大きい。

南場氏は夫の看病のために2011年6月に社長を退任している。「それまでヘルスケアは私にとって遠いものだったが、夫を見て、なぜ病気になってしまったのか、事前に知ることはできなかったのかと考えた」(南場氏)。この経験から、問題解決の方法として目をつけたのが、今回参入する遺伝子解析サービスだ。南場氏は「やるからには、倫理的課題に配慮し、学術的基盤に立脚した、最も規範的なサービスを提供したい」と意気込む。

遺伝子解析が今後ますます身近なものに

DeNAの業績は2014年4~6月期に7四半期連続の営業減益を見込み、苦戦が続く。主力のモバイルゲーム事業「モバゲー」の従来型携帯電話で遊ぶ利用者が減少する一方、スマホゲームのヒット作が生み出せていないためだ。

ヒットの法則のないモバイルゲーム事業をほかの分野で支えるために、13年11月に仮想ライブ空間「ショールーム」、12月に漫画雑誌アプリ「マンガボックス」と児童向け通信教育「アプリゼミ」を開始するなど、新サービス投入を続ける。今回の遺伝子解析もその一環だが、解析後の健康管理支援などへの展開が考えられるほか、ヘルスケア市場自体も成長が見込まれ、これまでの新サービスと比べて発展性がありそうだ。

ネット大手のヤフーも遺伝子解析分野を開拓しようとしている。今年3月から「Yahoo!ヘルスケア」でジェネシスヘルスケア社の遺伝子検査キットを2万9800円で販売。また、「ヘルスデータラボ」というプロジェクトを立ち上げ、遺伝子解析とウェアラブル端末で計測した脈拍などの生体情報、ウェブでの質問票などをかけ合わせた、病気予防支援サービスを今秋にも開始する。このサービスでは東大発のベンチャー企業ジーンクエストと連携し、遺伝子解析をジーンクエストが、その他の部分をヤフーが手掛ける予定。6月5日から無料モニターを募集し、サービス内容を詰める。

遺伝子解析と関連サービスは、ビッグデータ解析やインターネットを通じた利用者とのやり取りを得意とするネット企業との親和性が高い。究極の個人情報を取り扱うため慎重なビジネス展開が求められるが、ネット大手のDeNAとヤフーの参入をきっかけに、遺伝子解析が今後ますます身近なものになるのは間違いない。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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