【産業天気図・医薬品】米国で特許失効、国内は薬価引き上げの内憂外患。業績悪化は不可避で「雨」

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 特許切れが相次ぐ一方で、多くの企業は新薬開発に手間取っている。武田はアクトスの特許切れに間に合わせるべく、新たな作用メカニズムの糖尿病治療薬の米国での承認をめざしてきたが、当局からさらにデータを集めることを求められたため、タイムアウトになる見通し。アステラスもすでに米国特許が切れた免疫抑制薬プログラフが後発医薬品の攻勢を受けて売り上げの激減に見舞われている。同社も新薬開発を急いでいるが、ここ2~3年は厳しい状況が続きそうだ。

国内情勢も厳しさを増している。4月の薬価改定では医療従事者の処遇に直結する診療報酬本体を引き上げる財源として、薬価は約4500億円が削り取られることになった。薬価ベースでは5.75%の引き下げだが、価値の高い新薬の薬価を維持する代わりに、後発医薬品のある特許切れ医薬品(長期収載品)の薬価が大きく引き下げられたことで、長期収載品への依存度の高い日本企業は大きな痛手を被ることになった。大日本住友製薬<4506>や持田製薬<4534>、ゼリア製薬<4559>などは業界平均を上回る薬価の引き下げを被ったもようだ。

これまでの稼ぎがある主要各社は、この苦境ですぐさま経営危機に陥るわけではない。しかし、成長ドライバーを欠いた企業が今後、中期的な収益力低下に悩む可能性は高い。従来型の新薬メーカーとして生き残りに賭けるか、あるいは後発医薬品へのシフトなどに新たな活路を見出すのか、各社とも経営戦略の立て直しを迫られている。
(岡田 広行)

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