フォレスターが「今さらターボ」を搭載した訳 燃費性能大幅アップもまだ届かない規制水準

拡大
縮小

さらに問題となるのが、スバル自慢の機械式4WDシステムだ。スバルは、ハイブリッド車であろうとなかろうと、すべての4WDに後輪を駆動するためのプロペラシャフトを使っている。ちょっと前までであれば「4WDであれば当然、エンジンから後輪へのプロペラシャフトは必須」が常識だ。しかし、今は違う。

多くのクルマに、後輪をモーターで駆動する電気式の4WDシステム、通称「e4WD」「E-Four」が採用されるようになった。この方式ならば、FF(前輪駆動)車がプロペラシャフトなしで4WD化できる。使わないときは、普通のFF車として走れるため、燃費性能にものすごく有利だ。

ところが、スバルはハイブリッド車であっても、プロペラシャフトを使う機械式の4WDシステムを使い続ける。

スバルのシンメトリカルAWD(写真:SUBARU)

もちろん走行性能でいえば機械式4WDのほうが優れるが、プロペラシャフトを回転させるという負荷がかかるのだから、燃費的に言えば不利。

そうした「水平対向エンジン」「シンメトリカルレイアウトの車体」「機械式4WD」という3つのハンデがあるため、現実のスバル車の燃費性能は褒められるものではない。

具体的にいえば、欧州で2021年から導入される新しい燃費規制CAFE(企業平均燃費)の規制値CO2排出量95g/km(燃費で言うと約24.4km/L)をスバル車は、どれひとつとしてクリアできていないのだ。だからこそスバルは、新型エンジンを開発し続けている。

ブランドを毀損せずに打開するには

この先、燃費規制は世界的にさらに厳しくなっていくことは間違いない。そのため、スバルに求められるのは、なりふり構わない燃費向上のための技術開発といえる。最も簡単な燃費向上の方策は、トヨタとの提携の利用だろう。

先に「トヨタのハイブリッドシステムを使おうと思っても、簡単に搭載することが難しい」と書いたが、それでも「プリウス」などのトヨタのハイブリッドパワートレインを利用しつつ、機械式の4WDシステムもやめて後輪をモーターとする電気式4WDとする方法は、すべてを独自開発するよりは容易だ。

次ページ間近で見ていたサーブの悲劇
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT