「日経平均29年ぶり高値」を手放しでは喜べない コロナ禍の米国は結局日本よりも早く復活する

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このように、限定的な予算であってもマクロ的に効果が明確であるうえ、経済活動制限で大打撃を受けた旅行・外食などの企業復調を支える効果も絶大で、経済復調を後押しする適切な政策と評価できる。

もちろん、今後の感染状況次第だが、この政策を一律に止めれば関連産業への悪影響は大きい。繰り返しになるが、地域の感染状況に応じて対象範囲や規模を見直す対応がベストで、菅政権の対応は望ましい。

一方で、支援金の支給継続など財政政策強化で経済活動再生を支える対応は十分だろうか。そもそも医療体制の充実により大規模な財政支出を投じていれば、この程度の感染拡大なら十分対応できたはずだ。経済復調を後押しするために2021年以降もGo Toトラベルキャンペーンを延長すべきだろうし、さらに感染抑制と経済活動を両立させるためには、大規模な現金給付も依然として有力な政策手段になる。

アメリカに比べ日本の財政政策は不十分になるリスク

現在、政府では来年度の予算策定が水面下で進んでいると見られるが、2021年早々に申請期限を迎える持続化給付金制度について、支給対象企業を限定する動きがメディアで報じられている。

財政支援を縮小する政治勢力の声が大きいため、今後の追加経済対策は十分な規模には至らないリスクが大きい。筆者は、財政金融政策一体となって成長刺激を徹底することが正しい政策であり、結果として菅政権に対する国民の支持が高まり、政権基盤を強めると考える。だが官僚主導の色彩が強まっている現行の政策対応を見ると、不安を感じざるをえない。

すでにアメリカでは、政権交代をきっかけに金融財政運営に変化が見られる。1つは、FRB(連邦準備制度理事会)と財務省が行ってきた複数の資金供給の枠組みに対する財政資金の供給を12月末に終了させることである。

財務省が、財政資金を引き上げる措置は一見緊縮的な財政政策である。だが危機対応のための枠組みが役目をほぼ終え、余剰の財政資金をより必要性が高い失業保険給付の延長などの政策に回して、膠着している追加財政政策発動につなげる政治的な動きが背景にあるとみられる。であれば、アメリカの財政政策が緊縮に転じたというわけではない。

さらにバイデン次期政権は、ジャネット・イエレン前FRB議長を次期財務長官に指名すると発表した。経済成長、労働市場回復、経済格差縮小を重視し、FRB議長としての実績が十分なイエレン氏の財務長官登用が実現することで同政権では、金融財政政策が一体となった経済成長重視の政策対応が実現する可能性が高まっている。

足元では、アメリカと日本の財政政策をめぐっては、やや対照的な動きが見られている。これを踏まえると、2021年の景気回復や株高は、引き続きアメリカ主導で実現する可能性が高い。

日経平均株価が約29年ぶりの高さまで上昇していると経済紙などでは報じられているが、米日相対株価指数(S&P500/TOPIX)は、ほぼ戦後最低水準で停滞したままだ。2021年もこうした状況は変わらず、日本株の先行きはアメリカ株次第の状況が続くと予想する。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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