医療体制整備で手いっぱいになり、経済正常化を後押しするワクチン、治療薬の開発にまで本格的な対応が及ばなかったのだろう。また日本ではコロナ危機直後には、財政政策出動がスムーズかつ十分な規模で実現しなかった問題もあった。
アメリカではコロナ感染被害が日本より格段に大きい状態が続いているが、大規模な所得支援政策を早急に決定した結果、経済復調も実現した。そしてワクチン、医薬品の開発供給にも大規模な政府支出が実行された。トランプ政権のコロナ対応にはひどい不手際も目立ったが、経済活動を復調させるために健康を担保する医療インフラをいち早く実現させつつあるのは事実であり、依然として日本がアメリカに学ぶべき点はあるだろう。
日本でもここへ来てコロナ感染者が大きく増え、いわゆる感染第3波が訪れている。筆者は、米欧対比で格段に小さい程度の感染拡大が十分想定されるなかで、これまで医療体制を拡充する余裕があったのではないかと、強い疑念を抱いている。
「Go To トラベル」の効果は小さくない
そうした本質的な問題よりも、医療体制の逼迫に備えるために、経済復調を後押しするGo Toトラベルをどう取り扱うかが、政府が取り組む喫緊の課題になっている。だがより大規模な感染拡大が起きているアメリカや欧州で起きていることと比べれば、スケールが小さい事案と位置づけられるだろう。
ワクチンなどが普及していない現時点では、感染抑制と経済活動復調のバランスをつねに取る必要があり、状況に応じ政策の修正はやむをえない。
一方で、感染拡大は注意を要するものの、医療体制が全国規模で逼迫している状況とまでは言えない。12月1日に小池百合子都知事が菅首相との会談で、高齢者や基礎疾患を持つ人々の利用自粛を要請、首相が理解を示したとの報道がなされたが、医療体制などは地域によって差があり、実情に応じてこれまでの各種対応を見直すという菅政権の方針は妥当である。
しかも、さまざまな分析はあるものの、Go Toトラベルが感染拡大の主因とまでは言いがたい。Go Toトラベル関連では約1.8兆円の予算が策定されているが、10月31日までの約100日間で割引支援のために使われた金額は約2000億円である。
同予算にはまだ余裕があるのだが、一定の仮定を置いて試算すると、平時の旅行消費金額の約4割に相当する金額がGo Toトラベルの対象になっており、秋口からの旅行消費をかなり押し上げたと見られる。Go Toトラベルを引き続き年末まで続ければ、10~12月のGDP成長率をはっきり押し上げる効果が顕在化すると試算される。
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