「子宮頸がんワクチン」男も打つべき2つの理由 「なぜ僕は接種したのか」ある父子の体験談

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――浩一さんは、接種を受けられるにあたって、ご家族以外に相談したり話をされたりした方はいたのでしょうか。

浩一さん:事前に相談したのは、家族だけです。同じ高校出身で大学でも一緒になった友人には、接種を決めてから、「今度打つんだよ」という話はしました。ですが案の定「へえ」という反応で終わりでした(笑)。やはり「自分事」とはほど遠いですね。

高校OBの大学の先輩とも話したのですが、費用が高すぎるという意見もありました。

――たしかに万単位になる自己負担は、学生さんには特に厳しいかもしれません。日本は定期接種もそれなりに充実しているせいか、任意接種ワクチンの必要性をきちんとご理解いただくのが難しい面もあります。

和也さん:費用を親が負担しても、受けさせる価値はあると思っています。いわば「親が子どもにかけられる保険」の1つという認識ですね。HPVワクチン関連がんは、息子や、将来その配偶者となる人の命を奪いかねません。その病気のリスクを大幅に低減してくれるんです。数万~10万円の費用は、他のワクチンと比べると決して安いとは言えません。でも、命や健康を失うリスク、あるいは治療費を考えれば、費用対効果は抜群という判断です。

実際に接種を受けてみて…

――最後に、実際に接種を受けてみての感想をお聞かせください。

浩一さん:僕は今回(2回目)よりも、初回のほうが痛かったように思います。そのときは打った際の痛みも強かったですし、後からけっこう腫れました。インフルエンザの予防接種などより痛いイメージはあります。

和也さん:私は逆で、今回(2回目)のほうが痛かったですね。直後はかすかに指先までしびれるような感覚もありました。ただ、肺炎球菌ワクチンのほうが痛かった印象です。

――若い女性では、想像より痛みが強いことで心理的に不調をきたす方もいるようですが、痛みの感じ方は個人差があり、体調などにもよるのですね。お2人とも貴重なお話をありがとうございました。

男性が「自分事」と捉えるには、かかりつけ医など、身近にいて知識を持ち、なおかつ信頼できる人の働きかけが必要なようだ。適応を男性に広げただけで、多くの男子生徒やその親御さんが積極的に接種を希望するようになるとは、残念ながら思えない。定期接種化されなければ、男子への接種に積極的な医療機関はこれからも限られるだろう。

価格の問題もある。本来であれば、諸外国同様に9価ワクチンをもって男女とも定期接種化されるべきだが、見通しはなかなか厳しい。その点、和也さんの「親が子どもにかけられる保険」との考え方は、非常に合理的だ。

指摘されていたように、HPVワクチンは自分自身だけでなくパートナーを守るためのものでもある。男女ともに、適切な時期の接種が必要だ。未来の自分とパートナーのために今が決断のときだと、ぜひ知ってもらいたい。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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