「子宮頸がんワクチン」男も打つべき2つの理由 「なぜ僕は接種したのか」ある父子の体験談

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主な感染経路は、性交渉だ。といっても、性の乱れとは無関係である。HPVは感染後ただちに自覚症状が出るものではないため、“正しい交際”の中で感染者からパートナーへ、時期をずらしてその次のパートナーへと、いわゆるピンポン感染していく。

負の連鎖を断ち切るには、女性だけのワクチン接種では明らかに非効率的だ。一方で、男女ともに初交渉前に接種を受けておけば、根絶を目指すことも可能だ。

例えばオーストラリアでは、2007年に12~13歳女子のHPVワクチン接種を定期接種化。2013年からは男子にも拡大した。その結果、子宮頸がん原因の75%を占める型のHPV感染が、77%減少した。同国ビクトリア州では、18歳未満の女子の前がん病変(子宮頸部高度異形成)が、ほぼ半減したという。

アメリカでも2009年に男性への接種が認可された。2011年からは、女子と同じ11~12歳男子に対し、米疾病管理予防センター(CDC)による定期接種の積極的勧奨が行われている。英国も2019年9月から、女子同様に11~12歳男子を定期接種の対象とした(25歳まで無償接種が可能)。

こうして先進各国は続々と、男子へのHPVワクチン接種を開始している。このままでは近い将来、HPV関連がんは先進国で唯一、日本の“風土病”になるだろう。

中咽頭がんや肛門がん、直腸がんも引き起こすHPV

しれっと書いたが、風土病になりつつあるのは「子宮頸がん」だけでなくさまざまな「HPV関連がん」である。男子もHPVワクチンを打つべき、直接的かつ強力な理由だ。

HPVワクチンはこれまで、「子宮頸がんワクチン」と呼ばれることのほうが多かった。もともとHPVは子宮頸がんの原因として発見され、その予防ワクチンとして開発されたためだ。だがその後、HPVがさまざまな部位の粘膜に感染し、がんを生じさせることがわかってきた。

これまでに、中咽頭がん、肛門がん、直腸がん、陰茎がん、膣がん、外陰部がんも、HPV感染から発生することが明らかになっている。

特に中咽頭がんは、アメリカでは深刻な状況だ。中咽頭とは、舌の付け根から喉の突き当たり部分を指す。アメリカでは1975~2014年の約40年間で、中咽頭がんの発生率が57.3%増加した。新規患者は毎年およそ1万2000人。2020年の罹患者は計5万3260人(罹患率として10万人当たり4.62人、死者は1万人超)に上る見込みだ。

2011~2014年のアメリカ国民健康栄養調査(NHANES)では、全米18~69歳の男性11.5%(1100万人相当)、女性3.2%(320万人相当)に、HPVの口腔感染が見られた。だが、HPVの口腔感染率は、ワクチン接種によって確実に減少させられる。アメリカでは、中咽頭がんの70%以上がHPVによって生じているためだ。

アメリカの研究では、2011~2014年のHPV(16・18・6・11の計4型)口腔内有病率は、ワクチン接種者0.11%、非接種者1.61%だった。接種によって88.2%減少した計算だ。なお、年齢、性別、人種による影響は差し引いてある。また、この差は男性だけで見るとさらに顕著で、接種者0.0%、非接種者は2.13%となった。

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