「29年ぶりの日経平均」と言う人が見落とす真実 もし今の高値と比較するなら、1991年ではない

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日銀が10月26日に発表した中間決算で、9月末時点の総資産の額は690兆0269億円(前年同期比21%増)と、上半期として過去最高の数字となった。これは昨年度の日本のGDPのおよそ1.2倍だ。主な内訳は、国債が529兆9563億円、企業貸出金が104兆8956億円、ETFが34兆1861億円である。

所有するETFの時価総額は11月25日現在で約45兆1600億円と計算され、悪名高きETF買いで日銀はざっくり11兆円ほど儲かっている(含み益がある)ことになる。

このETFは「株式市場にとっては危険な時限爆弾だ」という見方があるが、筆者は鬼(日銀)が得た金棒(ETF)だと思っている。例えば、歴史に「もし」はないかもしれないが、平成バブル時にこの金棒を持っていたら、手の付けられなくなった過熱状態を鎮め、バブル崩壊後の失われた30年はなかったと思っている。

それだけではなく、この金棒をうまく使えば、筆者が想定する「未知の大相場」は制御不能なバブル相場にはならないと思っている。また「経営者を怠慢にする」という説もある。だが、日銀が大株主だから「経営は安泰だ」などと思っている経営者は誰一人いないはずだ。例えば、やはり日銀が大株主であるファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の頭の中には、そんなことは微塵もないだろう。

「ハイテク株とカネ余り」という奇跡の組み合わせ

前回のコラムでは「アメリカの政治形態(大統領、上院、下院)の組み合わせが良い」とも述べたが、5GやDXという新しい時代とカネ余りという組み合わせも、株式市場にとっては「奇跡」だ。

景気経済に大きなトレンドが発生した時には、資金経済はタイトになることを歴史は示している。だが、財政支出の抑制力を放棄しているコロナ時代の異常事態のため、世の中にはメガトレンドとカネ余りが同時に存在している。過去に起こりえなかった奇跡の組み合わせだ。

今週は、12月1日の11月ISM製造業景況感、同3日の11月ISM非製造業景況感、同4日の11月雇用統計という「アメリカ3指数」に注目だが、週前半の投資家へ中間配当で約4兆円の支払いがあることを忘れてはならない。ファンドの再投資も考えられる。すでに11月24日にはNTTドコモのTOB(株式公開買い付け)で、投資家にはやはり約4兆円が支払われている。12月も好需給という環境は衰えない。

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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