統合で目指すのは社員を雑草のように強くすること 高須武男 バンダイナムコホールディングス社長
バンダイとナムコの経営統合で日本屈指のエンターテインメント企業が誕生して2年半。統合直後に掲げた経営計画は軌道修正を余儀なくされつつある。この統合は成功なのか、それとも……。
(週刊東洋経済3月1日号より)
経営統合から約2年半。片や「機動戦士ガンダム」などのキャラクターを多数抱え、ゲームや映像に事業を広げる玩具最大手のバンダイ。片や遊戯機器メーカーから発してゲームソフト開発、アミューズメント施設に展開したナムコ。ともにセガ(当時)との合併話が破談になった因縁を持ちながら、2社は事業の重複が少なく「補完的」組み合わせと見られてきた。だが、統合時にシナジーを見込んで掲げた中期経営計画目標の達成は厳しい。2月に業績の下方修正を発表すると、株価は2日連続でストップ安を演じた。統合は成功なのか失敗なのか。高須社長に進捗と課題を聞いた。
--統合後、順調だった業績がこの2007年度は初の減益になります。何が起きたのですか。
昨年10月ごろから環境が悪化した。何となく消費者心理が冷めてきた。それが如実に表れたのがナムコのアミューズメント施設の数字で、既存店が昨年対比で非常に悪い。上期までは予定どおりだったが急減速です。特に郊外型ショッピングセンターの店の客足が鈍っている。
今回、ナムコの施設の約2割(50~60店)の閉鎖を決めました。業績がいい店もある。選別して集中的に人とモノとカネをつぎ込んで起爆剤とすれば、利益率は好転します。
--来期08年度は統合時に公表した中計最終年。当初掲げた目標は売上高5500億円、営業利益580億円でしたが……。
今期の修正計画(売上高4650億円、営業利益340億円)を基に練り直します。新世代ゲーム機の普及度合いなど、前提とした環境からズレが生じていた。中計の数字自体がナンセンス。来期はリバウンドできると思いますが、むしろ次の中計に向けた基盤づくりの年にしたい。
--環境の読み違えとは、プレイステーション(PS)3のことですね。
ゲームソフト事業の今期営業利益は150億円を見込んでいますが、中計策定時点は200億円の計画だった。50億円の差は、PS3など新型ハードの立ち上がりが予想以上に遅れ、ソフトの需要拡大が十分ではなかったということです。
当社はPS3に限らず任天堂のWii、DSなどあらゆるハードに等距離で取り組んでいる。ただ、PS3のソフトは開発費が1本10億~15億円と邦画の制作費並みに高い。それを回収するには50万本は売らなきゃならない。これは今の普及台数からするとかなりのハードルです。
ただ、私はPS3のブームはこれから来ると思っている。映像面で優れており、大型デジタルテレビが普及すれば有利になる。次世代DVD規格が「ブルーレイ」に軍配が上がったことも追い風です。
ゲームは開発に1年半か2年かかる。経営統合後に着手した作品が、今ようやく世に出始めたところです。世間に見える形で統合の意義、価値が出てくるのはこれから。マスコミやアナリストにはいつ結果が出るか、とせっつかれますが(笑)。