三宅占二・キリンホールディングス次期社長--世界の強豪と戦うにはまだまだちっぽけだ
突然の交代劇だった。サントリーとの統合交渉破談からわずか2日後、キリンホールディングスがトップ交代を発表。加藤壹康(かずやす)社長の引責辞任と見る向きもあったが、打診したのは交渉が大詰めを迎えていた1月。右腕として信頼を置く三宅占二副社長にバトンを託した。
国内市場が縮んでいく中、食品企業は変革期を迎えている。その中でキリンは2015年に売上高3兆円、海外売り上げ比率3割を目標に掲げ、近年矢継ぎ早に海外企業を買収してきた。サントリーとの統合交渉は拡大路線の「非連続の大決断」ともいえるが、勝ち組同士のM&Aは結局実現しなかった。単独行を選んだ同社に成長の限界はないのか。
--加藤社長から「次」の打診があったとき、迷いはありましたか。
「次はおまえだから、この春から頼むぞ」と、ストレートに言われた。キリンビールの社長時代にも他のグループ会社とのやり取りはあったが、ホールディングスではまた違う知見や判断が必要。事業範囲も国内、海外と多岐にわたる。国内営業しかやっていないので、それはいくら何でも重責。正直、適任なのかという不安や疑問もあった。ただ、考えても始まらないので、図々しくその場で即答した。
--改めて聞きますが、サントリーとの経営統合を目指した理由は。
15年までの計画達成に向けて順調にスタートしたが、今後の非連続な成長や、世界の強豪と競争していくにはまだまだちっぽけだ。もっと大きなアライアンスもあるのではないかと。
サントリーは国内で熾烈な競争をしているライバルだが、国内外の事業でそれぞれの強みが生かせ、補完関係にもあった。いつまでも国内競争ばかりの時代ではない、というのが両トップにあったのだろう。
さすがに、最初聞いたときはびっくりしたが、なるほどこれが加藤の言う従来の延長線にとどまらない「非連続の発想」か、と。社内外の役員とも情報共有して進めてきたし、反対意見や大きな方向性については異論が出たことはなかった。