あなたの「近所の薬局」が今消えそうな深刻事情 大手も個人経営も厳しい状況に立たされている

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4月10日に発出された厚生労働省事務連絡により、電話やビデオ通話による診療や服薬指導が認められていますが、現在もその状況は続いています。それとは適用の条件は異なりますが9月には薬局においても、オンライン服薬指導に関わる点数が新設されました。点数が新設されたことは、薬局の収益向上の余地も生じます。

オンライン診療による処方箋は、医師が患者の希望する薬局へ直接処方箋をFAXで送り、それを基に薬を用意して患者宅へ配送(処方箋原本は薬局が医療機関から後程受け取り)という動線をとることができます。

しかし、実態として薬局にそのまま取りに来られるケースが多いとも聞きます。薬局関係者に聞くところによれば、大病院の前にある薬局から1日400件程度の処方のうち60件程度オンライン診療の処方が来てそれらをほぼ宅送しているケース、1日100件程度の処方のうち、10~15枚程度がオンライン診療で、半数は直接来局、郵送は2、3割、残りは次回来局時にお渡しのようになっているケース、オンライン診療処方箋は日に数件というケースなどさまざまです。

オンラインも思ったより普及していない

なかには、病院側で患者希望があればオンラインで対応できる処方箋を出して配送対応を勧める体制はあるものの、「患者側でその対応の存在を知らないがゆえに申し出がなく、通常の受診になるケースが主で、思ったように普及していない」という話も聞きます。患者も病院の方針に多分に左右されるというのが実情でしょう。

オンラインが主たる動線にまだ至っていないとはいえ、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太方針)の原案で「電子処方箋、オンライン服薬指導、薬剤配送によって、診察から薬剤の受取までオンラインで完結する仕組みを構築する」ことは明記されており、ワンストップのサービス提供体制を整えることはもはや必至となりつつあります。

医師が受診控え対策でオンライン診療システムを導入するケースもあり、その近隣の薬局で呼応して共通のシステムを導入することもあります。患者体験としても、同じシステム内でオンライン診療を受けることができる診療所の検索、オンラインで服薬指導を受けて配送までしてくれる薬局を探せたほうがよいでしょう。

大手チェーンでは一気にオンライン診療、ないしは服薬指導のシステム導入を推進しているところもあり、オンライン化が進んでいます。一方で、それ専用のシステムを導入する予算をとれない薬局であっても、Zoom(ズーム)、LINE、Skype、FaceTimeなど無料のビデオ通話ツールでも案内の仕方を工夫してうまく患者さんをオンラインコミュニケーションに繋げているところもあるようです。

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