あなたの「近所の薬局」が今消えそうな深刻事情 大手も個人経営も厳しい状況に立たされている
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、観光・宿泊、外食など多くの産業が減収減益の深刻な打撃を受けていることはよく知られているところです。医療においても受診控えによる外来患者減少により、病院や薬局の減収も小さくないとされています。
11月12日に厚生労働省が発表した7月までの医療費の動向(概算)によれば、今年4~7月の調剤医療費(薬局の収入)は前年同期と比べて3.8%減少しています。
全国に約5万9000店あると言われる薬局。その数は約5万5600店のコンビニ(2019年末、日本フランチャイズチェーン協会調べ)よりも多い状態です。そんな薬局の現場では、今何が起こっているのでしょうか。
薬局では、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、患者が受診を控えたことで生じた、薬の処方日数の長期化が経営に大きな影響を及ぼしています。調剤の売上高は「処方箋枚数×処方箋単価」で算出します。処方日数が延びて受診回数が減れば、処方箋単価はあがるように見えますが、薬局に来ない分、処方箋の発行枚数は減少します。
また、薬剤師が処方箋に基づいて調剤することで得ることができる基本料や技術料も減少します。基本料や技術料は純利益の部分にあたり、薬局経営にとって死活問題となります。長期処方に耐えうるよう仕入れも増やすわけですが、利益が落ちる中で支払いを増やしているので、キャッシュフローが悪化します。
医療情報総合研究所の調査によれば、9月時点において、平均処方日数は前年同月比10%増の一方で、患者数は前年同月比7%減であり、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言」が全面的に解除された5月以降、水準が戻りつつありますが、第3波を迎え、今後のリスクも大きい状況です。
大手も個人も厳しい環境に置かれている
一般的に、各種事業者支援策は、「売上減少」を条件としているものが多く、売上高の多くを薬剤費が占める薬局はそれらを利用できないといった状況に鑑み日本薬剤師会は厚生労働省に支援を求めてきた背景があります。
とくに個人薬局は、共同購買組織に加盟するケースはあるものの、一般には購買力が小さく仕入れ値と売り上げの差益も多くは望めません。なかでも、小児科や耳鼻咽喉科は、受診控えの影響が大きいとされており、佐賀県薬剤師会が独自に行った調査によれば、5月の保険収入は小児科(26.7%減)、歯科(26.0%減)、耳鼻咽喉科(25.9%減)などその影響は甚大です。
個店の薬局経営者の集まりでは、運営資金が足りなくて「日本政策金融公庫でいくら借りたか」という話題が頻繁に出るという生々しい声も耳にします。さらに大手チェーンにおいても、調剤薬局事業の売上高は前年比より大幅に下がっている企業が散見されています。
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