FC東京が「ACL」に並々ならぬ意欲を示すワケ 大金直樹社長が語る「コロナ禍のクラブ経営」

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「赤字の最大要因はやはり観客数の減少です。昨季の入場料収入は11億400万円でしたが、今季は3分の1以下になる見込み。昨季までスタジアムに足を運んでくださっていた方の戻りが鈍いことをとくに課題視しています。2020年のシーズンチケットを購入いただいたSOCIO(ソシオ)は約1万人。コロナ禍で通常通り開催できないことを受けて全額返金したのですが、再開後に一度もスタジアムに来られていない方が約4割に上っています。『FC東京を1年間応援する』という意思を示した人が二の足を踏んでいるという厳しい状況です。

コロナの恐怖、声を出す応援ができない、歌を歌えない、仲間同士の飲み会ができないなど来場されない理由はいくつかあると思いますが、とくに子ども連れのファミリー層と高齢者が減っているのが気になります。そういうときだけに、今回のACL再開は大きなニュースです。この大会自体は海外遠征なのですが、『もう一度、FC東京を応援しに行きたいな』というきっかけになる可能性は低くない。そういう方向に持っていけるような機会にしたいと思います」

クラブと人々の接点が減った

大金社長がこう語るように、既存のファンを取り戻すことがクラブ経営改善への第一歩なのは間違いない。ただ、コロナ禍では告知宣伝活動もこれまで通りには行えない。感染状況次第では試合が予定通りに行われるかわからない中、ポスターを制作するにしても日程をどこまで掲載するかの判断が難しいし、商店街を足繁く回るような営業も接触を減らす意味ではやりづらい。

その結果、クラブと人々の接点は自ずと減っていく。その悪循環を何とかしなければならないという危機感は非常に強いという。

「2月の開幕戦向けの橋本拳人のポスターが6月中旬まで京王線の駅やホームタウンの商店街などに貼り続けられたほど、今年は告知活動が停滞していました。以前だったら節目節目に製作された青赤のポスターが人の目に触れるところに貼られていましたし、『FC東京ニュース』というクラブ発行のフリーペーパーを手に取る機会もあった。

ですが今年はそれも定期的に作っていないので、試合日程を知らない人も多いと思います。今後は感染リスクを考え、ウェブサイトやSNSの活用を増やしていくつもりですが、人と人の触れ合いの中でファン拡大を図ってきたわれわれとしてはやはり難しい。何をすべきかをより真剣に模索しています」(大金社長)

2021年度も3密を避けるための観客制限が続く可能性が高く、入場料収入を大きく伸ばすのは至難の業。スポンサーに関しても1月末で今季の契約が終わり、来季に切り替わるタイミングであるため、どのクラブも何とか契約継続を死守するために奔放している。ただ、FC東京の場合は、今のところ次年度撤退の申し入れはなく、おおむね現状維持が図れそうな見通しだ。

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