FC東京が「ACL」に並々ならぬ意欲を示すワケ 大金直樹社長が語る「コロナ禍のクラブ経営」

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「3月時点ではトップチームの練習は行っていましたが、スクールとアカデミーの活動休止にいち早く踏み切り、緊急事態宣言が出る直前の4月6日にはトップも休止状態にしました。そこから2カ月間は『われわれの存在意義はあるのか』『この先どうなってしまうのか』という不安に包まれました。

試合が実施できないということで収入もなくなり、クラブとして少しでも収入を得る手段やファン・サポーターとコミュニケーションを取る方法を考え始めました。オフィシャルグッズを対面で購入できない状況から、選手たちがオンラインで使用方法などを紹介してECサイトからの購入を促したり、大型連休中には『青赤STAY HOME週間』というオンラインを使ったイベントを実施。

現役選手はもちろんのこと、長友佑都(フランス1部・マルセイユ)や武藤嘉紀(スペイン1部・エイバル)といった国内外のOB選手らも協力してくれました。これまでFC東京は固いイメージがあったかもしれませんが、『コロナ禍だからこそ、逆転の発想でやれることをやろう』とクラブスタッフ全員で考え、開き直ったところはありましたね」と、大金社長は言う。

観客数減少で経営に大打撃

その後、7月4日にJ1が再開。ようやくサッカーのある日常が戻ってきたが、主力の橋本と室屋が立て続けに海外移籍。さらにキャプテン・東慶悟も負傷で長期離脱を強いられた。チーム全体に暗雲が垂れ込めたが、そこで光ったのが名将・長谷川健太監督の大胆采配だ。成長途上の若手を積極的に起用し、底上げを図ったことでJ1では上位をキープ。ルヴァンカップも決勝まで勝ち上がるなどの奮闘を見せているのだ。

「長谷川監督は筑波大学時代の1つ上。学生時代は怖い先輩でしたが、怖いだけでなく"偉大"な先輩。今はお互いの立場は違いますが、本音で意見を言い合える。今年で就任3年目ですが、いい信頼関係を築けています。今季の戦い方を見ていても『勝負師』だと改めて実感しています」と大金社長も指揮官の手腕に太鼓判を押していた。

(写真:編集部撮影)

こうした現場の努力に見合った集客があれば理想的だが、現状は厳しい。今季Jリーグでは当初、無観客試合からスタートし、7月10日から上限5000人へと制限を緩和。段階的に数字を引き上げた。

FC東京も10月24日の横浜F・マリノス戦から1万6000人まで上限を引き上げたものの、この試合の観客数は9518人。続く10月28日の柏戦は6632人、直近11日のコンサドーレ札幌戦も6357人と、上限を下回る事態に陥っているのだ。

となれば、経営面のダメージは大きい。2019年度の売上高は過去最高となる56億3500万円を計上。平均入場者数も3万1540人と史上初めて3万台に到達した。だが、6月に小池百合子東京都知事を表敬訪問した際、大金社長は「今季は約8億円の赤字見込み」という衝撃の数字を公表。その後、クラブ内のさまざまな経費の見直しを徹底的に行い、赤字幅は約4億~5億円まで圧縮できる見込みというが、それでも、楽観を許さない状況と言っていい。

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