浸かるだけで体をキレイに「夢のお風呂」の値打 こすって肌を傷めずとも小さな泡が汚れ落とす

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三神 万里子(以下、三神):私はてっきりファインバブルの技術がはやっているから参入したと思っていたのですが、そうではなかったのですね。一方で、レストランの食器洗浄用にノズルだけ換えればいいという、すごくやりやすい商品が世界的なヒットになっていたのに、サイエンスはなぜいきなり浴槽から始めたのでしょうか。

青山:私には、商品開発において絶対譲れないコンセプトがあります。世の中のすべての人が、毎日使うもの以外はやりたくないということです。お風呂はほぼすべての人が入ります。その浴槽で本当に肌を傷めずにきれいに洗えたら、すべての人に喜ばれる。極端なことを言うと、すべての人がマーケットになるのです。

日本人の入浴習慣を根本から変えていく

三神:ただ、もともと「洗い場で体を洗って、浴槽内はきれいに保ちたい」というのが日本の入浴習慣ですから、ここの習慣を変えなきゃいけないワケですね。

サイエンスの青山恭明会長(写真:NHK大阪拠点放送局)

青山:はい。「身体をきれいにすることは、こすって肌を傷めることではなく、浴槽に浸かってきれいにすることが、本当の意味できれいになる」というように、日本人の文化や習慣を根本から変えていくことを、当時のメンバーと誓い合いました。

三神:もともと青山さんは営業マンだったそうですね。その青山さんが技術者の着想で開発をする際、どんな会社と協力したらいいのか、どんな技術が正しいかなどを見抜くノウハウはお持ちではなかったのでは?と思いますが、どのようにアプローチをされたのでしょうか。

青山:『マイクロバブル年鑑』という10万円近くする分厚い本を購入し、ファインバブルを研究している企業や、大型プラントに活用する製品を開発している会社に、片っ端から連絡を入れました。当時は、一般家庭用の民生品として、その技術が使われているものはまったくなかったので、自分が思い描いている浴槽の開発について一生懸命語っていきました。ところが、まったく相手にしてもらえなかった。

三神:興味すら示されなかった?

青山:はい。「何を言っておられるのか」というような感じでした。

三神:日本では一般的に、会社が作れるものや作りたいものを基準にして商品開発を行う「プロダクトアウト」というスタイルが使われますが、本来はマーケットを見なければいけない。顧客の意見やニーズをくみ取って製品開発を行う「マーケットイン」という、逆のアプローチに対して扉を開かないと市場は大きくなりません。青山さんの着想はまさにマーケットインなのに、それに乗っかる企業がなかなか見つからなかったんですね。

青山:絶対に諦めきれませんでした。お風呂に浸かっている娘が、「きれいになったよ! パパ」と喜んでいる姿を思い浮かべ、それを実現したかったのです。

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