カマラ・ハリスをインド系女性が誇りに思う訳 「神の名」を冠する彼女の偉業が希望を与える

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ハリス氏の副大統領当選に歓喜したのは、インドだけではない。世界各地の「インド系移民の女性たち」が一斉に喜びの声を上げるほど、大きなうねりが起きている。

東南アジアのマレーシアに暮らすインド系移民子孫の女性たちも歓喜に沸いた。実は、マレーシアには18~20世紀のイギリス統治時代にインドから天然ゴム農園での労働者として連れて来られたインド系移民の子孫が国民の約1割を占めており、その多くがハリス氏と同じインド南部タミル・ナドゥ州からのヒンドゥー教徒だ。

ハリス氏に自らの姿を重ね合わせるように

そのため、イスラム教徒が多数派のマレーシアにおいて、長年マイノリティーとして暮らし続けてきたインド系マレーシア人女性たちは、アメリカという大国でマイノリティーでありながらも華々しい成功を収めたハリス氏に自らの姿を重ね合わせるかのように、喜びを爆発させているというわけだ。

首都クアラルンプールで、マレーシアの先住民らが天然の素材を使って丹念に作ったバッグなどを売るショップを経営する社会起業家、サシバイ・キミスさん(41歳)もその1人だ。ハリス氏当選が確実となったその日に、サシバイさんはFacebook上でバイデン氏とハリス氏のツーショットが描かれたイラストをシェア。ハリス氏がインドの伝統的な真っ赤な衣装を身にまとい、インド人女性が好む大振りのゴールドのジュエリーを指にはめているこのイラストは、「今、“カレースパイス”はたいそう誇らしげだろう」などのコメントとともに、マレーシアのインド系女性たちの間で広く拡散された。

インド系マレーシア人女性がシェアした、バイデン氏とインドの真っ赤な伝統衣装を身にまとったハリス氏のイラスト。当選に歓喜したインド系女性たちの間で祝福の意を込めて拡散された (イラストはHanifa Abdul Hameed氏作成)

サシバイさんも「いつかすべてのマレーシア人のための平等なマレーシアが実現しますように」とSNS上に祈る気持ちを表現した。その言葉の裏には、実は切実な思いが隠されている。多数派のマレー系イスラム教徒が国民の約7割を占め、国立大学への進学や公務員の採用などでマレー系が優遇される「ブミプトラ政策」が長年にわたって続いており、インド系マレーシア人は心の奥底でつねにもどかしい思いを抱えて生きてきた。

「浅黒い肌を持ち、そして差別を味わってきたタミル人として、そしてインド系として、私は誇りに思うのです。心からマレーシア人も人種に関わらない平等な政策を実現して前へ進んでいくことを切望しています。もし、アメリカがカマラを平等な市民としてみなしていなければ、アメリカは初の女性副大統領として彼女が就任することを成し遂げなかったでしょう。世界中でいかに多くのすばらしき才能が、時代遅れの不平等な政策で埋もれているか、想像してください。私たちも、人種を超えた未来に一歩踏み出すべきなのです」

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