「9割有効ワクチン」はどれだけ期待できるのか 一般人に行き渡るのはいつ?安全性は?
臨床試験の標準手続きに従って、このデータは思い込みなどによる偏りを排除するために「盲検化」されていた。つまり、ウイルスに感染した94人のうち何人にワクチンまたはプラセボが投与されていたのかは、専門家委員会を除いては参加者、医師、開発企業の経営陣も含めて誰にもわからないようになっている。とはいえ、有効性が90%を超えたという推定結果からして、ワクチンを接種した参加者のうちコロナに感染した人が極めて少なかったのは間違いない。
インフルワクチンより有効性高い
Q:これはいい結果なのか?
A:いい結果だ。アメリカ食品医薬品局(FDA)は、50%を超える有効性を緊急承認申請の条件としている。ファイザーとビオンテックの初期データが正しく、現実世界でのワクチンの有効性を正確に反映しているとすれば、50%の要求基準は大幅に超過達成している。
私たちが定期的に接種している承認済みワクチンの有効性を見れば、「有効性90%超」の威力がわかるはずだ。例えば、インフルエンザワクチンは効き目が弱く、その有効性はせいぜい40〜60%といったところ。この程度の有効性しか達成できていないのは、インフルエンザウイルスが年々変異し続けているためだ。一方、麻しん(はしか)のワクチンを2回接種した場合の有効性は97%に達する。
Q:ファイザーのワクチンは安全なのか?
A:ファイザーとビオンテックのここまでの報告によれば、安全性に重大な懸念は出ていない。今回の大規模治験に先立つ5月、両社はワクチンの安全性について問題の兆候を洗い出す目的に特化した小規模な治験をスタートさせていた。この小規模治験では4種類のワクチンが試され、その中から発熱や倦怠感といった軽度または中等度の副作用が最も少ないワクチンが選び出され、今回の大規模治験に進んだ。
このワクチンがFDAから緊急承認され、何百万人という規模で投与されることになれば、さらに希少な副作用を示すデータがないかどうか、アメリカ疾病対策センター(CDC)とFDAが監視することになる。ファイザーの治験参加者も、2年間は経過観察が続けられることになっている。
Q:真っ先にワクチンを接種できるのは誰?
A:ファイザーCEOは、今年末までに3000万〜4000万回分のワクチンを用意できるとしている。ファイザーのワクチンは3週間の間隔で2回接種する必要があるため、1500万〜2000万人分に相当する量だ。
具体的に誰が最初の接種対象となるのかは決まっていないが、感染リスクや重症化リスクの高い人が優先されることになるだろう。医療従事者のほかに、高齢者や、肥満、糖尿病など重症化リスクの高い基礎疾患を抱えた人々が考えられる。
ファイザーとビオンテックによれば、2021年末までに年間13億回分まで増産できるという。だが、これではとても世界の需要を満たすことはできない。世界の需要に追いつくには、ほかのワクチンでも有効性が確認され、複数メーカーで増産を進める必要がある。
Q:ワクチンの一般利用はいつ可能になるのか?