「9割有効ワクチン」はどれだけ期待できるのか 一般人に行き渡るのはいつ?安全性は?

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A:ファイザーはFDAがメーカーに提出を求めている2カ月分の安全性データを収集した上で、11月の第3週に緊急承認申請を行う可能性が高いとしている。その後、FDAは外部の専門家で構成される諮問委員会と協議することになるが、ワクチンの安全性と有効性、数百万回分のワクチンを安全に生産する能力に関する詳細なデータを検証するには、数週間かかるとみられる。

今年末までに一部のハイリスク集団向けにワクチンが承認される可能性はある。ただし、これはすべてが予定どおりに進んだ場合の話だ。思いがけない問題が浮上すれば、承認は遅れる。

無感染症患者に対する効き目は未知数

Q:ほかのワクチン候補にとって、今回のニュースは何を意味するのか?

A:治験が最終段階に入っているワクチン候補は、世界にはほかに10種類ある。ファイザーとビオンテックが有望な結果を得たというニュースを受けて、この分野の専門家の間には楽観的な見方が広がっている。

「ほかのワクチンの有効性についても希望が高まった」と話すのは、イェール大学の岩崎明子教授(免疫学)だ。

ファイザーとビオンテックのワクチンだけでは世界の需要に対応できないため、ほかのワクチンでも開発に成功したとの報告が続けば、世界のコロナ対策は大きく前進することになるだろう。

Q:もうマスクをしなくてもすむのか?

A:マスクの着用は今後も続ける必要がある。新型コロナはアメリカ全土で猛威を振るっており、この冬にはかなり厳しい状況になることを覚悟しなければならないと保健衛生の専門家は警告している。

仮に今後数カ月以内にワクチンが承認されたとしても、接種できるのは国民のごく一部だ。保健当局者の間では、有効なワクチンが接種希望者に行き渡るには、来年になってからもまだかなりの時間を要するとの見方が大勢を占めている。さらに、無症状感染者による感染拡大を防ぐのにワクチンが有効なのかどうか、あるいは感染者が重症化するリスクをワクチンでどの程度下げられるのかといった点もまだ明らかになっていない。

専門家の多くは、ワクチンが普及したとしても、コロナの感染が低いレベルで落ちつき、公衆衛生上の脅威が収まるまでは、マスク着用などの対策を重ねる必要があるとしている。

(執筆:Carl Zimmer記者、Katie Thomas記者)

(C)2020 The New York Times News Services 

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