「ザ・秘境生活」がYouTubeに見つけた厚い金鉱 企業のチャンネル運営が直面する3つの課題
企業チャンネルが乗り越えなければいけない最初のハードルが「社内稟議」だ。ディスカバリーでも、YouTubeを本格的に始めていいのかという議論があったという。「有料放送で知られているため、『有料放送の既存視聴者が嫌がる』『ブランド毀損になるのでは』『うまくいかないから無駄では』といった意見も実際あった」(榊原氏)。
こうした課題はありつつ、ディスカバリー・ジャパンは比較的、それを乗り越えやすい環境にあったといえる。なぜなら、同社のデービット・マクドナルド社長(当時はカントリーマネージャー)も、前職がYouTubeだったためだ。榊原氏と同様、YouTubeの威力と可能性を十二分に知っていた。
「有料で視聴している既存の視聴者が離れるのでは」という懸念に対しても、マクドナルド社長は「YouTubeで見てくれる人は、有料放送で見てくれる層とは違うという自信があった」と語る。こうした”元YouTube社員”たちの説得でYouTube強化の方向性はまとまり、第一の関門を突破した。
「長尺動画は見られない」は本当か?
2つ目のハードルは、YouTubeに合った動画の配信スタイルを見つける作業だ。マクドナルド社長は「長尺(テレビで放送するような40〜50分)の動画がいいのか、短尺(数分)の動画がいいのか、議論がヒートアップした」と当時を振り返る。
開始当初はひとまず、長尺・短尺、両方を投稿していくことにした。1分程度のごく短いものから、10分程度のもの、フルエピソード40分前後のものまで満遍なく、1日4~5本程度配信していった。どういった動画が本当に人気になるのかを確かめるためだ。
こうした実験の中で最大のヒットとなったのは、長尺のサバイバル系コンテンツだった。社内には「YouTubeは短いものしか見られないのでは」という声もあったが、「面白いものであれば長くてもちゃんと見られると証明できた」(榊原氏)。
冒頭の「ザ・秘境生活」が顕著な例だ。実はこのシリーズ、ディスカバリー本体のサービスでさほど人気の高いコンテンツではなかった。だが、スタフォード氏の自撮り映像で構成される本作は、きれいに編集されたほかのシリーズに比べ臨場感や親近感が強く、個人のクリエーターが数多く活躍するYouTubeと相性がよかった。
スタフォード氏は今や、来日イベントが計画されるほどの人気になった(新型コロナの影響で中止、オンラインでのファンイベントは開催)。「テレビではダメでも、YouTubeではうまくいくケースがある。色々試す必要性を改めて感じた」(榊原氏)。
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