なぜ株価反発でも円安ドル高にならないのか 海外ヘッジファンド勢が手控え
[東京 27日 ロイター] - 日本株はリバウンド継続だが、ドル/円
「円安ストーリー」はまだ捨てられていないようだが、アベノミクスが色あせ気味の中、手掛かり材料を失っているという。円安の支援なしでは、日本株も上値追いは難しいとの見方が多い。
<日本株の買いは海外の長期資金>
日経平均<.N225>は4日続伸。一時、約1カ月ぶりの高値水準となる1万4700円を回復した。前日まで3日間で約560円というやや速い上昇ピッチに利益確定売りも出ているが、リバウンド基調は継続。東証1部売買代金は1兆7027億円とまだ少ないものの、海外の長期資金の買いが入り始めているという。
「長めの資金が入り始めている。海外のロング勢や国内の年金勢のようだ。大口ではないが、薄商いの中でジリジリと株価を押し上げている。世界的な株高を背景に、大幅に出遅れている日本株にも買いが回ってきているようだ」と大手証券トレーダーは話す。
一方、ドル/円は101円後半でもみあい。これまでは株高に連動し、100円台後半の水準から前日は一時102円台を回復したが、早くも一服商状となってしまった。「102円台では輸出の売りが並んでいる」(邦銀)という需給的な要因もあるが、昨年まで株高と円安を連動させるオペレーションを行っていた海外ヘッジファンドの動きが鈍っていることが大きいという。
「貿易赤字の定着などもあり、長期的な『円安ストーリー』はまだ捨てられていないものの、昨年に株買い・円売りの組み合わせで取引していた海外ヘッジファンドは、短期的には円安進行を諦めているようだ。インパクトのある成長戦略や日銀追加緩和など日本の材料が出るまでは、米金利の動向に左右されよう」とFXプライム取締役の上田眞理人氏は指摘する。
<円ショートを落とす投機筋>
実際、手持ちの円ショートポジションを海外ヘッジファンドはいったん落としているようだ。
米商品先物取引委員会(CFTC)が発表するIMM通貨先物をみると、投機筋の円売り越しポジションは、昨年12月24日の週の時点で14万3822枚に達していた。
だが、直近データである5月20日までの週は、5万3787枚とアベノミクス相場開始直後の12年11月20日以来の水準まで減少している。
年初に105円台だったドル/円は、101円台まで下落。貿易赤字が定着しただけでなく、経常収支の黒字幅も大きく減少するなど、ファンダメンタルズ上の円安構造はより強固になりつつあるが、ドル/円の動きは投機筋のポジションに連動している。
「最近のドル円は株価がほとんど材料にならなくなり、もっぱら米金利に連動している」(国内金融機関)という。その米金利は緩やかな米経済の回復と、利上げ予想の後ずれで低い水準で推移。金利上昇も警戒されているが、6月5日にの欧州中央銀行(ECB)理事会で金融緩和が実施されるとの観測が一段と強まる中、グローバルマネーが米国債に流れ込んでいるとみられている。
<一段の円安には副作用も>
ドル/円が日本株の上昇に追随していないということは、円安の支援なしでも日本株が上昇していると好意的に受け取ることもできる。
だが、足元の日本株上昇はあくまで出遅れの修正の範囲内との見方が多く、円安のサポートなしで日経平均が1万5000円のレンジ上限を超えていくのは難しい。「今、日本株を買っている海外長期資金も、上値を追うようなムードではない」(前出の大手証券トレーダー)という。
一方、1ドル110円を超えるような円安が、日本経済にプラスになるかには異論も多い。輸出株の存在感が大きい日本株市場では、依然として円安は「買い材料」だが、トータルでみれば、円安は微妙な水準を迎えている。
アストマックス投信投資顧問・証券運用部シニアファンドマネージャーの山田拓也氏は円安に過度に期待せず、成長戦略など構造改革をしっかりと進めることが日本株にとって重要と語る。「海外ヘッジファンドにアピールできるようなインパクトのある政策が出れば、それに越したことはないが、地味でも日本の潜在成長力を押し上げるような政策が盛り込まれれば、時間がかかっても海外勢だけでなく、国内の投資家も評価してくれるだろう」との見方を示している。
(伊賀大記 編集:田巻一彦)
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